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英雄は誰がために立つ
Life5  紅の魔王と氷結の魔王
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フィアの報告通りね。決して綺麗で達筆――――とはいかないようですけれど、何事においても懸命に向き合う姿勢は見て取れます」
 「あ、ありがとうございます」

 飾らず偽らずの言葉だったからこそ、一誠は憤る事も無く、素直に受け取れた様だ。

 そんな時、何時の間にかに、一誠とミリキャスの勉強ノート付近に紅茶を淹れたティーカップがあった。

 「疲れたろうから一息入れると言い、ミリキャスもな」
 「・・・・・・・・・」
 「ありがとうございます、士郎さん!」

 士郎の言葉にミリキャスは敬語で受け止める。感情的には如何やら尊敬の念が混じっている様だが。
 因みに、士郎からミリキャスの呼び方は本人からの希望であり、その逆もまた同じく、だ。
 そして一誠は訝しむ――――と言うよりも、何かを疑うかのような視線を士郎に向けていた。

 「何だ?」

 何かを疑われるような謂れなど何も無い――――事は無いが、少なくとも一誠を怒らせる様な事に身に覚えがない士郎は、取りあえず聞く。

 「昨日の夜から思っていたんですが、執事服をかなり着こなしているようですけど、今回が初めてですよね?」
 「いや」
 「そうですよね〜。いくら士郎さんだからって、執事の経験なんてあるワケが・・・・・・って、えぇええ!?」

 一誠にとっては、あまりの事だったらしく、大げさすぎと言われる位に驚いていた。

 「やっぱりそうでしたか。執事業が板についていましたから、まさかとも考えていたんですが」
 「流石にヴェネラナさんの目は誤魔化せませんか。と言っても半年ほどですよ?」
 「ほう?それほどの短い期間であれほどの熟練者のように動けるとは、感心しますね」

 如何やらヴェネラナは士郎の話に納得したようだが、嘘だった。
 2人目の魔術師の師、遠坂凛と共に魔術協会の三つの内の一つ、時計塔に留学している時に金の工面に困り果てたので、士郎がルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの屋敷にて働く事に成った。
 それに加えて、3人目の魔術師の師である、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグこと『宝石翁』や『万華鏡』と呼ばれた第2魔法の使い手の下で、師事最中に何故か『執事をやれ』と言われた歳月を合わせれば、最低でも3年間は執事業に勤しんでいた。
 因みに、士郎は女性の押しに弱いので幾度もの強襲を受けて遂には、ルヴィアに押し倒され――――ゲフン!少々騒ぎになった。
 兎も角、士郎がその辺ばかりか、公爵家や王族の執事長達と引けを取らぬ仕事を熟せることは、代えがたい事実である。

 「完璧すぎだろ・・・」
 「すごいです、士郎さん!」

 あまりの事実に一誠は、驚きを通り越して最早呆れていた。

 「そうは言うがな、昔の俺は一誠と大差なかったんだぞ?
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