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英雄は誰がために立つ
Life5  紅の魔王と氷結の魔王
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 逞しい男性の体に、力強くだが確実に自分を優しく抱き留める腕、そして年齢に不相応な程の男の色気。
 何より、自分を本気で心配そうに見下ろす、殿方の真剣な眼差し。
 これらの現実に頬を染めるヴェネラナ。
 だが、バアル家史上最強の女性悪魔の誇りと、グレモリー家現当主の(つがい)たる女主人(ミストレル)としての矜持が現在の自分の状況を許さずに、何とも言えない戸惑いも瞬時に蹂躙してから、士郎の片手を握り離れてから姿勢を整える。

 「・・・・・・・・・有難う御座います、士郎さん。お陰で助かりました」
 「いえ、どんな時でも女性(レディ)を支えるなり壁になるなり助けるのは。男として当然の事ですから」
 「・っ・・・・・・・・・・・」

 自分の事を女性(レディ)扱いする士郎に、またもやさっきの戸惑いにも似た感情が溢れ出しそうになるヴェネラナだが、今度は殴殺した。
 そして、歯に衣を着せぬ士郎の発言に呆れ顔を向ける。

 「あの・・・・・・、俺は何をしたんでしょうか?」
 「解らないのでしたら努力なさい。そのままでは何時か・・・女性に刺されますわよ?」

 ヴェネラナの忠告に対して、本気で首を傾げる士郎。
 そんな様子に際して、内心では『重症ですわね』と呟きながら、一誠とミリキャスが勉強中の部屋へ向かうために、ほぼ同時ではあるが士郎よりも先に部屋を出た。


 −Interlude−


 ――――俺は現在、悪戦苦闘中だった。
 悪魔の世界の上級界流の件や、貴族とは何たるかについては勿論、悪魔文字から冥界の歴史までと、普段からさほど得意でもない事、机に向かい猛勉強中だった。
 しかし、弱音を吐くわけにはいかない。
 サーゼクス様の御子であるミリキャス様の前で、無様な真似をして、部長の顔に泥を塗るワケにはいかなかったからだ。
 とは言え、如何して俺だけなんだろう?
 本音を言えば、俺も部長達と一緒に、グレモリー観光ツアーに行きたかったぜぇ。
 あっ、いや、部長を庇ってくれたから、執事としての業務として士郎さんも残っているんだっけ?
 兎に角、如何して俺だけ勉強してるんだーーーー!?

 そう、心中では愚痴を呟いている一誠と、懸命に勉強しているミリキャスの前に、ヴェネラナと、トレイに紅茶を淹れて持ってきた士郎が入室して来た。

 「御婆様!」

 それに瞬時に反応したのは、ミリキャスだった。
 直にヴェネラナに寄って来て、彼女のドレスの腰部分に抱き付く。
 そんなミリキャスの頭に、掌を優しく置いて撫でてから、一誠の下へ近づく。

 「一誠さん。ミリキャスも、勉強は捗っているかしら?」

 妖艶な笑みを携えながら、一誠のノートを覗き込むヴェネラナ。

 「サーゼクスやグレイ
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