32:あと三人
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、早く。
俺は薄光の粒子舞い散る薄暗い森の獣道を、稲妻の如く駆け抜けていく。
◆
その道中、
「これは、ひどい……」
と、俺は思わず呟いていた。
俺の目の前には、凄惨たる光景が映り込んでいた。
所々で、ユニコーンを探索していたパーティが傷の治療や撤退を余儀なくされている姿が至る所に見られたのだ。その多くの者が注意域や危険域にまで追い込まれていた。
俺は高速移動での残像に霞む情景の中で彼らを一瞥するも、辺りに死神が居ない事を確認し、足を止めることなく通り過ぎていく。
「――……!」
が……不意にその足を急停止させた。
ブーツの裏の鋲をガリガリと火花立たせて制動し、俺は進行方向を変え、目に入ったある人物へと駆け寄った。
「――……ハーライン!!」
傷ついて路傍でうな垂れているプレイヤー達の外れに一人、見知った青色の軍服の姿があったのだ。
「ハーライン! お前も死神にやられたのか!?」
「…………ああ……キリト君ッ……」
そう呟きながら振り返ったその顔は……絶望の表情と共に涙に濡れていた。
「わ、私のミスティアがっ……」
そう半ば喘ぐ言葉に、彼の胸に抱きかかえる武器を見てみると……変わり果てたパルチザンの姿がそこにあった。
柄の半ばから真っ二つに折れ、美しかった刃は根元から大きく欠けてしまっていたのだ。言葉を失うほどに美しかった幻想的な容貌は、見る影もなくなっていた。恐らく、武器の耐久力はもう一割にも満たないだろう。存在していられるのはもう時間の問題――
と、そう思ったまさにその瞬間。
「あ、あぁああっ……!!」
ハーラインのひび割れた声と共に、そのパルチザンは端からポリゴンとなって崩壊を始めた。
「わ、私の最高傑作がぁっ!! ああぁっ、待ってくれっ、ミスティアッ!!」
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散りゆく粒子をかき集める様にハーラインは必死に腕をかき回すも……
あっという間にそれは何も残さず、無常に虚空の中へと消えてしまった。
――今、彼のパルチザン《バッシュ・ミスティア》は死んだのだ。
「ミ、ミスティア……」
それを見届けたハーラインは魂の抜けたような顔を伏せ、そのままピクリとも動かなくなった。
「……ハーライン。それは、死神にやられたのか?」
すると、コクリと力ない頷きが返ってくる。
「……一瞬だったよ……たった数撃で、私のミスティアは破壊された……。奴は、禍々しいまでのオーラを纏っていた……」
ハーラインの武器《バッシュ・ミスティア》は、過剰に装飾された風貌だったが故に著しく耐久値が低く、また彼自
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