第十五話
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っぴり悲しそうな笑顔を見て、俺は感動と悲しさに同時に襲われた。そんな顔をさせてしまった自分が、この上なく情けない。
「さっきも言ったように、私は毎朝のカミナ君とのお話はとても楽しかったですし、あなたのことは結構好きでしたから。だから、名残惜しいんです」
「そう、か……これだけいい雰囲気で告白してくれたなら、もう結構満足かもしれなかったな」
病気で倒れた主人公が、死の間際に美少女から告白される。ここまでのシチュエーションというのも、他にはないんじゃないだろうか。
「しれなかった、なんですね」
「ああ。……ちょっと、まだ死ねない理由があってさ」
「それは、大変ですね」
まだロアの世界にかかわってなくて、何にも知らない頃なら良かったかもしれない。Dフォンを渡されたその日であっても、問題はなかった。それがティアにとって必要なことであるのなら、死んでもいい。でも、今はそうもいかない。
テンと鈴ちゃん。すでに二人も俺の物語がいる以上、主人公が勝手に退場するわけにはいかない。……いや、何もできそうにないんだけどさ。
「大変ですけど、もうカミナ君には何もできないんですよ?」
「ま、そうなんだよな……体、動きそうにないし」
「だから、今のうちに謝っておきます」
「うん?」
ケホケホ、と一つ咳き込んでから。ティアは話を始めた。
「えっと、ですね?実は私、まだカミナ君と知り合って一ヶ月くらいなんです」
「……………」
理解から吹っ飛びすぎていて、俺は何も言えなかった。が、少しずつその言葉の意味を理解する。
「そういうわけで、はい。それより昔の思い出なんかは全部ありもしなかったことなんです。カミナ君とか他の人たちとか、皆の記憶を『私がいた』っていう形で書き換えました」
「……つまり、『ここにティアがいたらこうなってて、こう感じてて』、みたいな感じのことが実際の記憶になってる、ってことか?」
「大体そんな感じです。よく今の話が理解できましたね」
「いやまあ、確かに自分でもそう思うんだけど……すごいな、魔女」
話を聞いた俺の感想はそれだった。その人がどう思うかまで完璧に再現するだなんて、すごすぎるだろ。魔女ってどこまですごいロアなんだろうか。ロアって有名度で力が増すらしいし、魔女ともなるとそういう面では強いんだろうなぁ。
「ショックは……受けないん、ですか?」
「いや、そりゃ確かにショックはあるんだけどさ……感情そのものまでティアに作られたわけじゃないんだし、一ヶ月はしっかりとあったわけだし」
つまり、厳密には違ってもティアと過ごしてきたようなものなわけだし。何より一ヶ月の間にあった出来事には何も混ざっていないのだ。何も問題はない。
「……ふふっ。本当に、不思議な人ですね
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