第十五話
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両手でやさしく包んでくれた。
「今は間違いなく現実ですよ。そうじゃないなら、温かさは感じないでしょう?」
「う、うむ、確かに……」
どうにかそう返したものの、俺はそれどころではない。すっごい至近距離にティアの顔がある。俺が男子の中で背が高い方でも低い方でもないこともあって、本当にすぐそこに。いつの間にか俺の右手は頬から離されて、つねった影響で少し赤くなっているであろう頬を、ティアがやさしく撫でてくれている。本当にこれは、夢じゃないのだろうか?
「……あっ、」
あ、ティアが現状を理解したのか真っ赤になった。間違いない、これは現実だ。俺の夢であったのなら、これを再現することは不可能だ。
それにしても、朝の散歩でここまで貴重な体験ができるとは……悪夢に感謝である。
「えっと、ですね……」
「ティアのしてくれたことや見れた顔など、大変素晴らしかったです。ごちそうさまでした」
「って、そんなこと言わないでください!」
俺に対して呆れたように一つため息をつくティア。まあ何にしても、これで一度リセットだろう。ティアもそれは分かっているようで、ガラッと話を変える。
「それで、カミナ君はどうしてこんな時間に?」
「あー、いや。ちょっと悪夢を見て目が覚めちゃってさ。気分を変えるために散歩でもしようかな、と」
「悪夢、ですか……」
ザックリとしすぎていてどんなものなのかと思っただろうに、ティアは何も聞いては来ない。思い出したくないであろう、と思ってくれたのだろうか。いい子すぎる。
「それで、ティアは何でこんな時間に?」
「私は……ちょっと目が覚めちゃって、寝なおせなかったので」
それで散歩でも、ということか。そのおかげでこうして会うことが出来たのだから、俺にしてみればいいことだらけである。
その後立ち話を続けるのもということで、公園のベンチに移動する。その時ベンチの周辺に似た猫が走って移動したが、公園の外に出るということはなく、公園の中にとどまった。気のせいか、だんだんと猫の数が増えてきているような気がする。本当に猫の集会でも始まるのかな?
「どうかしましたか?」
「ああ、いや……今日はやけに猫を見るなぁ、と」
「ふふっ……ケホケホ。この公園、朝は割とこんな感じですよ?」
「そうなのか」
驚きである。思い出の公園の別の姿を見たような気分になり、なんだかおもしろくなった。というか、なんでティアはそんなことを知ってるんだ?
「……なあ、ティア」
「ね、カミナ君」
と、俺が呼ぶよりも先にティアの方が俺を呼んできた。早かったからというわけではないがティアからどうぞ、とジェスチャーで示すことに。
「じゃあ、その……えい」
「ふぇ?」
無意識のうちに声
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