蒼天に染めず染まらず黒の意志
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に、劉協も華琳の思惑など読み取れない。
ただ……月だけは華琳と同じく、楽しそうに微笑んでいた。
「では徐公明。東屋にお茶とお菓子を準備せよ。見張りは張コウと夏侯淵を立て、周辺の警備も怠るな。東屋周辺には誰ひとり寄せてはならん」
一体なんだと呆れながら、彼は御意と一言呟いて部屋を後にする。
ゆっくりと抜けて行く黒の背を見送ってから、月が劉協に言葉を紡いだ。
「素のあの人とお話をしたいと陛下はおっしゃいましたので……その為の準備を致しましょう」
†
晴天の霹靂。雲一つ浮かばない空の下で、お茶を用意した秋斗の隣で楽しげに笑う女が一人。
「にひ、一個くらい食べてもいい?」
「ダメだバカ。やんごとなき人には最上級のお持て成しをするもんなんだ。つまみ食いされた後のもんなんて許されるわきゃねぇだろが」
礼儀礼節ってもんを知れ、と彼は睨みつけ、伸ばされた手を払いのける。
「ぐぬぬ……だって昨日着いたとこだからまだ娘娘のお菓子食べた事ないんだもん。秋兄も朝まで帰って来なかったし……おいしいモノ食べたいじゃんか」
「八つ刻まで待て。お前の分だってちゃんと用意して貰ってあんだぞ?」
「待てない! お腹減った!」
「昼飯は食っただろ!?」
「別腹ってやつだよー♪ 甘いお菓子かー……秋兄が食べたい♪」
「あぁ? どういうことだよ?」
くるくるとその場で回る明を訝しげに見た。彼女はべーっと舌を出して笑う。
一歩、二歩で彼の隣まで並んだ。妖艶な笑みは童顔にしては大人っぽく、上目使いに少しドキリと鼓動が跳ねる。
にへらと笑った彼女は……また赤い舌を出した。
「昼間のふしだらは無しだけどー、ちゅーくらいならいいよね♪」
「却下だ!」
「えー、別にちゅーくらいいーじゃん。お堅いなぁ」
「なんでお前としなきゃならねぇんだ」
「じゃあぎゅーってして? してくれたらちょっとはお腹も満たされるし」
「甘えんなバーカ。それに仕事中だろ? しっかり働け」
「隠密なんか帰って来てから粗方殺しちゃったよ? 周りの人払いも秋蘭が済ませてるんだからちょっとくらいいーでしょー? あたしだって寂しかったんだもーん」
きゃいきゃいとはしゃぐ明は、彼の服の裾を握りつつ駄々をこねる。
子供か、とツッコミたくなるも彼は代わりとばかりにため息を零したて……ぽん、と頭に手を置いた。
「ふぇ?」
「まああれだ。どうしてもってんなら夜まで待て。でも……お前は夕以外に依存するべきじゃないと思うがな。出来る限り一人で割り切ってみな」
ぐしぐしと赤髪を撫でる。復讐を遂げた後に、もしまたブレてしまっているのなら少しだけは支えよう、そう伝えた。
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