蒼天に染めず染まらず黒の意志
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間の協力を、人の世を救いたい彼は誰よりも求めている。だから覇王と出会わない彼は華琳を打倒して従える方法を選ぶ可能性が高く、華琳も打ち倒されることでしか従う事など無い。
――私の目の前でよくそんなことが言えるわね……秋斗。
内心で考えながらも、華琳の頬は上がっていた。
根っから話し合うつもりなど無い彼の遣り方は嫌いでは無くて、思い描く世界は華琳や秋斗の思想が無ければ出来上がらないとも同意している。
彼の言い分は、大陸を治めるモノは優秀で器があれば誰でもいいと言っているに等しいが、その実、覇を貫いた王が居なければ望む平穏には成り得ないとも示唆している。
才を重要視する華琳の思想を持ちながら、才ではなく和を用いる仁徳の君に尽くしていた矛盾だらけの黒麒麟……その男は他の何処にいっても内部を変えようと動くのだと、華琳にもそう思えた。
玉座の上、思いの外高い月と華琳の評価に劉協の目が見開かれる。
「多分ですが……“もしも”劉備の元に居た黒麒麟がこの子と出会っていたら、黄巾の時に関わりがあった曹操軍と敵対を選んででも董卓軍に付くことを選ばせていたはず。幽州の白馬長史を仲間に加えて袁家や覇王の打倒を目指したでしょう。長い乱世をより速く鎮める選択肢を選ばないはずが無く、覇王の服従の機会を逃すような黒麒麟でもありません。
敗北の危険よりも、曹孟徳が大きな力を得ることを阻止しつつ、自分は劉備の思想に従っているフリをしながら曹孟徳と同じことを説くでしょう。その果てに……異端者として排斥され殺されるとしても」
細められた目は厳しく、劉協の瞳を射抜いた。
自分は劉備の敵で、黒麒麟も劉備とは相入れないときっぱり言い切ったに等しい。
茫然と口を開いた劉協の顔に、少しばかり恐怖が滲む。
「そ、そなたに……忠義は無いのか……?」
帝としてそれを受けてきた劉協は、英雄と謳われるその男の本質に恐れを抱く。
内部で暗躍する影に操られていたのが彼女や彼女の姉、そして母であり、今現在の華琳が行っていることとも似通っている。故に、彼女は恐怖を覚えた。
人は操られることを受け入れられないモノが多い。立場が上であるモノならば、自分の考えに従わないモノを疎ましく思ったり、畏れを抱いたり、排斥しようとするモノも居る。
彼の場合は主の為に折れることなどせずに、自らが殺されることも是としている。自分よりも誰かの方が先頭に相応しいから……彼は決して一番前に立とうとはしない。それが余計、皆を勘違いの泥沼に引き摺り込んで行くのだが。
野心を抱きながらも剣として振られることを望む彼を本当の意味で扱えるのは……正しく、この大陸で同じ思想を持った覇王くらいしか居らず、覇王の元でしか生きられなかった。
彼が望もうと望むまいと、
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