蒼天に染めず染まらず黒の意志
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、バカなことを……悪戯が過ぎるぞ」
首を振った。形式を重んじる華琳がそんなことをするはずが無いと思ったから。
楽しそうに口を引き裂いた華琳が小さく笑う。
「認めないわけね? じゃあこう言いましょう。この場は泡沫のまほろば。蒼天の下に居るこの時、此処に集うモノは人である。
幸いなことに雲一つ無い良い空なのだから、その意味さえ分からないあなたではないでしょう?」
ぐ……と言葉に詰まる。
天子を蒼天と例えるのなら、蒼空の下で二天は要らない。
鬱屈とした雲など一つも無い晴れ晴れとした晴天に、個人の澱みは一つもいらない。
「降参? まだ意地を張る? 意地を張ってもいいのよ? 続ければ続ける程あなたらしい姿が浮き彫りになるのだから」
「……相変わらずお前さんの相手は苦手だ」
「私に勝つつもりだったんでしょう? この程度で音を上げるの?」
先ほどの事さえ話に出して、華琳は彼を追い詰める。
特にこういう場に於いては、秋斗が華琳に勝つ術は無い。先手を取られた以上不利ではあったとしても、である。
「ああ……分かった。俺の負けだ。此処はまほろばでいい。蒼天の下、大地に立つのはただの人。了解だよ、覇王殿」
遊びたい盛りに同年代の友達と遊ぶことすら許されぬのは、どれほどの地獄であろうか。
大人たちからも敬われ続けるのは、どれだけ寂しいことだろうか。
まほろばならば許される。彼女が帝では無いのなら許される。一人の少女の心すら救えないなら、彼は人を救うことなど出来ないであろう。
故に、秋斗は呑み込んだ。人の心を持った天でなければ、きっと世界は変わらないから。彼女の心を殺してしまうのは、彼の描く世界では否だから。
よろしいと頷いた華琳に対してふるふると首を振って、彼は椅子を引いた。一番風が心地いい席の椅子を。
後に、月の隣で少し警戒している、一人の少女の前に膝を付いた。
「“初めまして”。俺は姓を徐、名を晃、字を公明という。今回は特製のお茶とお菓子を準備したから、話をしながら目一杯楽しんで行って欲しい」
「うむ……苦しゅうないぞ。余は此処ではただの協じゃ。以後、まほろばのお茶会で堅苦しい態度は全て禁ずる。よいな、徐公明?」
皇帝の衣を脱いで、彼女が着ているのは侍女の服。
彼の崩れた言葉にほっと一息ついてから、腕を腰に当てて尊大なモノ言いをするその侍女が愛らしいながらも可笑しくて、秋斗は苦笑と共にその美しい白金の髪を優しく撫でやった。
「りょーかい。んじゃあ、そうさな……始まりはこんな言葉でどうかな」
首を傾げた。先ほどとはうって変わった彼の言葉遣いに少しばかり驚きながら。
何を言うのだろう。何を言ってくれるのだろう。人に思えなかったその男が浮かべる笑み
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