蒼天に染めず染まらず黒の意志
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ならない。
共に伸し上がって行くモノならまだ分かる。幼い時から友達で、最底辺から最上段に駆けあがるのなら馴れ馴れしく接することも許されよう。
しかし劉協が蒼天としてこの世に生を受けた以上、皆が敬意を持たずして象徴とは成り得ない。
上から目線のモノ言いなどしない。気兼ねなく接することを望まれようとも、皇帝と人間の間の線を取り外してしまっては、彼が目論んでいる国の姿は作れないのだから。
天は一人孤独に立つべき。人が想い、慕い、敬い、愛するから天なのだ。人が願ってやまず、届かぬからこそ天であるのだ。対等に見える立場のモノが居ては、それだけ天の高さを低くしてしまう。
誰でも簡単に隣に立てる、否、“同じ高さまで昇ることが出来る天”などに、何の価値があると言うのか……それが分からぬ彼では無い。
彼の生きていた国の天たる皇は、誰にも穢されることは無く、人々に愛され、人々を愛していたのだ……それがあるから、彼は皇帝の存在を貶めることだけはしない。
眉を顰めた劉協はじっと彼を見据えた。反して、華琳は彼の思い描く皇帝の扱い方が読めて楽しげだった。
――そう……やはりあなたの望むモノは私と同じ。そして月も。
理解者は少ない。黒の隣で微笑む月を見て、同じ先を目指すことの出来るモノに歓喜が湧く。
帝を象徴とする国家の創立は、権力の分散を考えている華琳と、漢の泥沼を知っている月には思いつくこと。
例えば劉備のような思想なら、天と手を取ろうと考えるかもしれない。少女の幼き見た目を理解した上で、彼女も人だと説いて聞かせるに違いない。
民の同情は得られよう。しかし野心を持つ者達には餌を与えることになり、少数の民には線引きを曖昧にさせてしまう。
『今の天が失われようと、代わりのモノが立てばいい』
そういった隙を思考に挟み込まれる。手を取り合える劉備が代わりの天になればいいのだ、と。いや、劉備でなくとも、他の誰でもいい事になってしまう。それを象徴として貴べなどと、下らぬ妄言に等しい。
上下関係を位置づけない遣り方は乱れを生むこともあるのだ。上手くいけばよくとも、悪く行けば容易く崩れる。
代替の効く天に価値はあるか無いか……乱世の起りを考えれば、華琳や月、そして秋斗はその理論を悪手として受け止める。
民主主義の国家を知っている彼からすれば余計に。
しかしながら、劉協は彼の答えの隙をざっくりと突き刺した。
「……そなたは“天の御使い”であろう? 余と同じく人の身から外れているモノであれば、言葉を崩すことは問題なかろうて」
問いかけの鋭さからも分かる聡明な頭脳に、彼は思わず舌を巻く。
凍りつくような眼差しにあるのは疑念。そして、“天の御使い”という存在に対する感情が浮き出ていた。其
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