遺跡編 来訪
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被った彼の地は、当時と全く違う様相になっているのだとユーノが捕捉する。特にミッドの人間が矢鱈と手を加えていったせいで、一部の地域はミッドの技術による高層建築や摩天楼がいくつも並んでいるのだとか。
「あの世界の地中にはデバイスのコアやフレームに使われる魔導結晶やホワイトゴールドなどの貴重なレアメタルが豊富で、管理世界になってから一気にトップシェアの鉱物産出量を誇っています」
「……一気にトップシェア、か」
「まぁ、きな臭い感じは正直僕も抱きますが、それでもこの世界の復興が早く進められたのは、その資源による収益でインフラが整理されたおかげでもあるので、一概に否定はできませんね」
「…………」
一瞬、俺は11年前の闇の書事件を管理局が利用して、この世界を自分達の管理下に置いたのではないか、と勘繰ってみたものの、そこまでして手に入れたいと思うほど次元世界の物資は困窮していないはずだ。多分、事件後の調査で鉱物資源が豊富だと判明したのだろうし、変に疑い出すとキリが無い。一応、気には留めておくが。
そういう話を聞いた後、次元航行が終了し、ニダヴェリールの大地が俺達の視界に映る。そこは管理世界の手が入った都市部だけ近代化が進み、周りの地域は荒廃した地面が色濃く残っている歪な環境だった。11年前の闇の書と管理局勢の戦いの痕跡は既に風化しているが、元々あったはずの緑豊かな自然は一切見当たらなかった。ある意味それこそが、過去から残り続けている世界の傷なのかもしれない。
主要都市のクリアカンにてユーノが一時契約した次元航行艦用空港の第7ハンガーにラプラスを着艦させた俺達は、ニダヴェリールの大地に足を着ける。ラプラスに乗っている間マキナやネロが窓から外を眺めているのを横目で見たのだが、11年ぶりにこの地に降り立った二人は様変わりしてしまったこの世界の光景を前に、ただ無言で佇んでいた。
「……で、この後の予定はどうなっているんだ?」
「まず管理局ニダヴェリール支部の人とアポイントメントをして、この世界を出歩く許可を発行してもらいます。後は好きな時間を使って自分なりに納得のいくまで遺跡を探索すればいいんです」
「そうか、それぐらいの軽い用事ならさっさと済まそう。遺跡以外にも色々見ていきたい場所や知りたい事があるしな」
そうやって俺は天に浮かぶ“青い太陽”を仰ぎ、操縦で固まった身体の筋肉を伸ばしてほぐす。誰もが知っているように普通、太陽の光は赤みがかった白であるのだが、この世界の太陽はまるで月に近い色の光を放っている。そのおかげでこの世界は全体的に青みがかっており、海で波の音を聞いているかの如く、精神的に落ち着ける雰囲気を醸し出している。というか落ち着きすぎて意識が薄くなりそうだ。眠気に襲われないように気をしっかり保とう。
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