第5話「自分ニモ負ケズ」
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妹の結野アナを護るため、全ての責任を負うため巳厘野衆へ行った晴明。
その彼を追わんと銀時と外道丸は駆け出したが、直後ある人物に呼び止められた。
それは無表情に縁側に立つ双葉。
「熱烈なファンとは知っていたが、ここまでだったとはな。だが物事には限度があるぞ」
空から降る雨と同じくらい冷たい眼で、双葉は銀時と外道丸を見下ろした。
いや、双葉の瞳に映るのは銀時だけだ。
「もうファンが口出しする領域をとっくに超えている。術も使えない兄者が行ったところで何の勢力にもならないと思うが」
「術なんざいらねーさ。俺は汚ねーケツにブチこめる木刀がありゃ充分よ」
「戯言ばかり言っていると血の雨を浴びるはめになるぞ」
双葉は瞳に銀時を捉えたまま冷徹に言う。
「これは奴等がまいた種だ。奴等がどうにかすればいい。苦しもうが堕ちようが、そんなのは自業自得だ」
両家の争いを見せつけて他者が口出しするのを散々拒んでおきながら、やっぱり困ったから助けてくれ――なんて虫の良すぎる話だ。甘いにも程がある。
誰かに協力してもらうのを悪いとは言ない。人はお互いに支え合ってこそ手を取り合って生きていける唯一の生き物だから。
だが外道丸達は兄に縋ろうとしているだけだ。
こんな無意味な戦いに、無関係なはずの兄が巻きこまれるのがどうしても許せない。
それで傷ついてしまうようなら尚更だ。
そんなの馬鹿げている。
「兄者が血の雨に濡れる謂れはない」
鋭い瞳が銀時を刺す。
銀時もまたその視線から逃げず妹を見据える。
重苦しい沈黙が流れる。雨音だけが二人を包む。
そんな鳴り止まない雨の中で、銀時が静かに口を開いた。
「結野衆の陰陽師は幕府おかかえのエリート中のエリートだが、そいつは血の滲むような修行をして陰陽道を極めた奴にしかなれねェ。なのに結野アナはエリートコースを自ら降りた。俺ァなんでお天気お姉さんなんかになったんだって聞いたんだ。そしたら結野アナ、なんつったと思う?」
「さぁな」
興味なくあっさり吐き捨てる。
何を突然言い出すのかと思えば、あの天気アナの動機などどうでもいい――と、今の双葉に響くものは何一つなかった。
だが次に銀時から語られたお天気お姉さんの想いは、ほんの少し……ほんの少しだけ風向きを変える。
「『将軍や幕府のためなんかじゃない。市井の人々の笑顔のために力を使いたいから』、だとよ」
その一言に冷徹な眼差しが消え、代わりに当惑の光が宿る。
そんな双葉の瞳を見据えて、銀時は苦笑混じりに――何かを懐かしむように――言った。
「他人の笑顔のために動くなんたァ酔狂な話じゃねーか。……あと言っとくけどなぁ双葉、俺はとっくの昔から泥に濡れてんだ。今
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