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【銀桜】7.陰陽師篇
第5話「自分ニモ負ケズ」
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 気になって結野アナは声をかける。
 自身も雨でびしょ濡れであり他人(ひと)の事は言えないが、心配で声をかけずにはいられなかった。
 できることなら傘を手渡してあげたいが、あいにく持ち合わせていない。
 それなら雨宿りできる場所まで案内しようかと思っていると、銀髪の女が静かに顔を上げた。
 その顔には見覚えがあり、ハッと目を見開く。
「あなたは確か万事屋さんの……」
「打たれるだけか?」
 銀髪の女――双葉の突然の問いに結野アナは困惑する。聞き返そうと口を開くが、それを制するように双葉の声がかぶさった。
「当たれば皆の笑顔と共に祝福し、ハズレれば雨に打たれ己を罰する」
 的を射抜くような発言に、結野アナは自然と口が閉じてしまう。
 それとは逆に双葉は冷徹な眼差しで淡々と言う。
「貴様は誰かの手なしでは笑えないのか。自分から笑うこともできないのか」
――……そんなことない。
――私はずっと笑顔でお天気をお届けするって決めたんだから。
「貴様、察しているのだろ。この雨が止まぬ理由を」
――……。
 知らないといえば嘘になる。
 陰陽術で天気を操りこの雨を降らせているのは結野衆を、自分を憎んでいるあの黒き陰陽師。
 毎日天を走りめぐる二つの光柱。
 あの光はきっと――
「この雨が止むまで、誰かがこの雨雲を晴らすまで、そうやって打たれている気か?」
「……お天気占いが終わるその時まで、私は笑顔でお届けするだけです」
――それが今の私にできる唯一のこと。
――市井の人々の笑顔のためになるなら私は……。
 声に出さず静かに決意する結野アナ。
 そんな彼女の心を知ってか知らずか、双葉は尚も無表情に見据え――そして力強く告げた。
「雨に打たれても、嵐に打たれても、笑っていたいなら笑っていろ――

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=つづく=

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