第5話「自分ニモ負ケズ」
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更何に濡れようがどうだっていいんだよ」
無数の滴を浴びながら、銀時は冷たい雨が降り注ぐ空を見上げる。
「ましてやこんな天気だ。血に濡れようが雨に濡れようがたいして変わりゃしねーだろ。春雨だろーが秋雨だろーが血の雨だろーが濡れて参ってやるよ。……だが――」
「女の涙に濡れんのだけは、ごめんだ」
* * *
銀時達が走り去った後も、双葉はその場に立ち尽くしていた。
――馬鹿げていたのは私か。
止めたかった。
攘夷戦争で兄はずっと戦ってきた。
生き別れた後だって何度も戦ってきただろう。
それゆえに失ったモノも兄の身にのしかかる負担も多く、今も辛いはずだ。
だからできることならもう戦わせたくない。
これ以上重荷を背負わせない為に、止められるものなら止めたいと思っていた。
……ただの独りよがりだった。
兄はこれっぽっちも気にしていない。
どんなに重荷がのしかかっても、立ち上がって歩いて行こうとしている。
理由なんか無くったって、兄は戦うことを選ぶだろう。
自分の為でも何でもない。
大切なモノを護りたい想いだけで刀を振るえる。
どんな苦境でも決して諦めず、己の信念を貫き通す。
火の中でも飛びこんでいくような、後先考えない無鉄砲なバカ兄。
それが『坂田銀時』だ。
――やはり兄者は強いな。
――いつも誰かのために兄者は戦っている。
――誰かのために闘える。
――……なら私には何ができる?
――私は坂田銀時の妹だ。
――けれど、それだけだ。
――重荷を背負えるほど、私の背中は大きくない。
――兄者の妹として情けないな。
時々、自分は本当に銀時の妹なのか疑う時がある。
兄妹だからって同じじゃなくて当たり前だが、どこか違和感がある。
兄が戦うのを止めたいと思っていた。しかしそれは結局自分が傷つきたくなくて、心配するフリをしていただけだ。つくづく自分勝手で我儘な奴だと自分が嫌になる。
そんな器の小さい人間が誰かのために何かできるだろうか。
――兄者は誰かのために闘っている。
――駄メガネも酢昆布娘もそうだ。
――あの……天気アナも……。
お天気お姉さん・結野クリステル。
輝かしい笑顔で朝の顔として人気を博していたが昨年のスピード結婚・離婚騒動、そして不調続きのお天気予報でついに降板にまで追いこまれる、という芸能界のスキャンダルなどどうでもよく聞き流して気にもしていなかった
まさかその裏に政略結婚と一千年以上渡る両家の因縁というとんでもない事実が隠されていたとは。
しかも結野アナがお天気お姉さんをしていた理由は――
――……やはりダメだな。私は自分のことしか見ていない。
――いや誰も見ようとしてなかっただけ
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