二節・少年は思い出し、また躓く
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
黒髪で何処か女顔の少年が、草原をゆったりと歩いていた。
何か用事がある訳でもなさそうで、極々単純な暇つぶしか、それとも体力温存かのどちらかだと思える。
帯で吊るし背負う、造型から多分だが両刃の剣であろうそれの、右に傾いた柄を軽く叩き、前を見据えて再び歩き出して―――
「うおおおおおおおおおおおっ!?」
「は?」
年頃の女らしい澄んだ声に似合わぬ、何処か男っぽい大絶叫で脚が止まった。
見るとその雄叫びと共に、ポニーアップの半分を上へ折ってピンでとめた、名称不明な髪形の少女プレイヤーが彼の方へと走ってきたのだ。
腰に下げた鞘の形状からして、曲刀使いだとも分かる。
後ろには、ドでかい牛型モンスターが角を傾けて迫っており、速度的には牛の方が遅いのか、距離は着かず離れずで有りながらもやはり危うい。
少年はこの、雄牛なのか雌牛なのかよく分からないモンスターを見ても、余り驚かず静かに剣を握る。
……この少年、実はSAOのβテスト経験者でもあり、そして先程までこのドでかい牛の相手もしていたのだ。
だからこそ、この落ち着きなのだろう。
「少しずれろ! 迎え撃つ!!」
「お、おう!」
やはり少女らしからぬ返答に少年は若干眉をひそめるも、直ぐに戦闘モードへ切り替え剣を抜き放つ。
右肩越しに構えた剣が黄緑色の光を放ち、少年は砲弾も描くやの勢いで、牛の顔面めがけて飛びだしていく。
片手直剣スキル《ソニックリープ》による突進切りが命中し、派手なサウンドエフェクトでクリティカルヒットした事を告げた。
「ブ、ブモオオオオオッ!!」
「とどめは君がやってくれ! 俺はサポートに回る!」
「よっしゃ余裕出てきた! もち、オレに任せときな!」
一人称ですら少女からかけ離れたものであったせいか、少年の左肩が少しばかりガクッと下がった。少女は少年の様子になど構わず、音高く曲刀を抜き放った。
その剣に彼は少々目を見張る。
刃の形は尖端が二股である事を除くと刀に近く、これはNPCショップでは売っていない事を示している。
それなりに鍛えてあるのか、少年の剣……固有名《アニールブレード》と比較しても、一歩劣るだけでかなりの技物に見えた。
つまり彼女も元ベータテスターなのだろうか。
(いや……でも必死に逃げてたよな、そして今しがたの言動……ってことは本当に運が良かっただけなのか……?)
取りあえず少女が何者なのか考えるのは後にして、目の前の牛型モンスター『powered cow revenger』―――“パワード・カウ・リベンジャー” へと剣先を向ける。
脚力を活かして爆ぜるが如く跳び、体重を乗せる
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ