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大刃少女と禍風の槍
二節・少年は思い出し、また躓く
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近距離突進を二人左右にバラけて避ける。


「くらえっ!」


 少女は右肩を引いて半身に構え、そこから勢い良く突きこみ手首を捻って斬りはらう、曲刀スキル『ツイスト・エッジ』で斬り込む。
 そちらへターゲットが移動し、視線が自身から外れたのを逃さず、少年が青色に包まれた剣を振り降ろし、振り抜かず一瞬止めて跳ね上げ『V』の字を刻んだ。
 その片手直剣スキル『バーチカル・アーク』込みで、まずはダメージを与える。

 思ったより……というか見た目よりもHP値が少ない事を知っていた少年は、ソードスキルをそれ一回のみで封印すると、執拗にチクチク突っついて憎悪(ヘイト)値を常に自分へ向くよう誘導する。

 まんまと策にはまった “パワード・カウ・リベンジャー” は、背後から迫っていた、曲刀スキル『リーバー』―――振り降ろしから前方への跳躍、突き出した刀身での掠め切りで、少女の手により止めを刺されポリゴンの破片へとその姿を変えた。


「いよっしゃああっ!!」


 両手を大きく掲げて拳を握り、大喜びするその様に、少年は苦笑いすると同時『始まりの街』に置いてきた、この世界初めてできた友人の事も思い出し、少々ナイーブな所作で瞳を伏せる。

 彼の心境の変化などつゆ知らず、少女は肩をダメージにならない程度に強く、しかし遠慮なしにバシバシ叩く。


「ありがとなあんた! オレから見てもカーソルは単なる赤だったからいいけどよ、やっぱ目の前にあんなでかい牛が出るとビビっちまうよな……ともかく助かった!」
「あ、ああ」


 男のような話しぶりに圧倒されながらも、少年は如何にか言葉を返して、気になってきた事を質問する。
 ……否、確信を得ている事柄を口にする。


「なあ、あんた。今 “逆襲の雌牛” ってクエスト中なんじゃないか?」
「おお! そうそうそれだよ! 良く分かったな!」
「前に二度受けた事があるから……もしかしてって思ったんだ」
「なら手際の良さにも頷けるな!」


 違う……少年は心の中で呟く。本当はβテスト時から知っていたのだ、とも。

 ……だが、即行で『始まりの街』からビギナー達を見捨てて走り、以後も一応ながら情報を提供しているモノこそいれど、多くのベータテスターが何も言わず無視を決め込んでいる昨今。
 ベータテスターをこの少女が憎んでいる可能性を踏まえて、敢えて少年は『もう一つの真実』だけしか口にしなかった。


「クエスト報酬楽しみだなぁ……あ! 絶対言うなよお前! 楽しみ半減するから!」
「解ってるって。此処から先はもう良いよな?」
「もち! これ以上世話にはなれねぇって。そんじゃな!」


 それだけ言うと少女は勢い勇んで走っていった。

 男っぽい喋り方
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