第五十一話 二人の伯爵その一
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美しき異形達
第五十一話 二人の伯爵
薊達は博士から自分達のことを聞かされてその日はそれぞれの家や寮に戻り休んだ。薊は寮に帰ると。
夕食を食べて裕香と共に風呂に入った、寮の風呂は寮生達の殆どが実家に帰っていて二人以外には誰もいない。
その風呂の湯舟の中でだ、薊は裕香に言った。
「話は聞いたけれどな」
「それでもよね」
「驚いたことは驚いたさ」
こうは言う、しかしだった。
薊は顔色は普段のままだった、その顔のまま裕香に話していく。
「けれどふうん、って感じでな」
「特に、なのね」
「思うところはないな」
そうだというのだ。
「前から違うんじゃないかって思ってたからな」
「薊ちゃん自身が」
「ああ、火を出せて身体能力もさ」
普通の人間と全く違うからだ。
「何か違うってな」
「思ってたから」
「だからな、人造人間って言われてもな」
「皆取り乱したりしないのね」
「院長さんに言われてもな」
その時からというのだ、横須賀において。
「ましてや院長さんには娘って言ってもらったからな」
「ええ、いい人よね」
「あそこで化けものとか言われてたらな」
それこそとだ、薊にしてもというのだ。
「落ち込んでたよ」
「そう言われると誰もね」
「ああ、よく漫画とかであるだろ」
「あるわね、人造人間にしてもね」
「普通の人と違うものがあるとな」
「化けものって言われたりとかね」
確かに漫画でもよくある、他の媒体でもだ。そうして主人公に疎外感を与え物語を作っていく場合がよくあるのだ。
「あるわね」
「だよな、けれど院長さんも」
薊は裕香の顔を見つつ微笑んで彼女にも言った。
「裕香ちゃんにもな」
「私も?」
「全然驚いてないよな」
「だって。こうしたお話ってね」
裕香は微笑んでその薊に話した。
「私もよく読んできたから」
「ああ、その漫画とかで」
「アニメとかね、それにね」
「それに?」
「院長さんも先輩も同じお考えみたいだけれど」
裕香はこの言葉からすぐにだ、薊に笑顔のままこうも言った。
「身体が人間でも化けものっているでしょ」
「世の中にはか」
「そう、サイコ殺人鬼とかね」
そうした存在を例えに出すのだった。
「あまりにも醜い心持ってる人とか」
「そういう連中こそがか」
「本当の化けものだって思うし」
「だからあたしにもか」
「菖蒲ちゃん達にもね」
他の人造人間である少女達にしてもというのだ。
「そう思うわ」
「人間か」
「生まれは普通の人と違っても」
「そう言ってくれるんだな」
「実際にそう思うから、だってそんなこと言ったら」
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