第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
11話 微かな道標
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らざるものであると口々に囁く。
図らずも《ディフェンシブ・オーダー》発動中に更なる人員欠如が発生した場合に発せられる、オフィサーの撤退指示を背後に受け、それをスタートの合図に駆け出す。
「燐ちゃん!?」
「そいつらを見ててくれ!」
咄嗟に茂みへと飛び込み、矢の軌道を辿るように、その先にいる何者かを目指す間、脳内で情報を整理する。
第一に、何者かが使用した矢という武器。これは、戦闘をシューティングゲーム化させないというSAOの大前提となるコンセプトに真っ向から反発する代物だ。まず、プレイヤーでは在り得ないのだが、この階層において、エルフというモンスターの中には弓を扱うものが存在するのだ。黒エルフならば《ダークエルヴン・シューター》が、森エルフならば《フォレストエルヴン・アーチャー》がそれぞれ存在している。つまり、弓矢による狙撃である以上はこの何れかである事はほぼ在り得ないのである。
第二に、森エルフを攻撃したという事象。森エルフと黒エルフはモンスター間でも敵対関係にあり、それを象徴するキャンペーン・クエストさえあるのだが、その設定を反映してか――或いは、この関係を強調するためにキャンペーン・クエストがあるのかも知れないが――両者の小隊は、森の中で遭遇した場合、決まってモンスター間でありながら戦闘を行うのである。先の事案で判断すれば、矢を放ったのは必然的に《ダークエルヴン・シューター》となるのである。
最後に、シューターが取った奇襲という行為。森の中で遭遇したエルフの小隊はたとえアーチャーやシューターといった後衛型のモンスターであれ、盛大に気勢を発して戦闘を行うことが確認されている。その声量は百メートル単位で離れた位置にも十分に届くほどのもので、剣や斧、槍といった攻撃範囲の狭い武器が前提のSAOにおいて、突如として大量のモンスターに囲まれるという理不尽な状況を回避するために用意された《バランス調整》のために演出であると個人的には考えているが、その考察は横に置いておくとしよう。とにかく、エルフ間の戦闘に於いて息を潜めての奇襲というのはそれ自体がイレギュラーなのである。ましてやモンスターのルーチンから判断すれば、エルフよりもプレイヤーに対しての憎悪値が高くなるので、遭遇時点ではプレイヤーを優先して狙うはずなのだ。
アルゴの言っていたレアエルフの事もある。本来の行動規範から外れ、まるで敵を選んで行動したとでも言いたげな何者かはまさに特異な存在。プレイヤーを認識すると即座に逃走するという動作もまた、異常の一言に尽きる。せめて姿だけでも確認できればと思ったのだが、どうにも既に逃げられてしまったらしい。仕方なく現在地をマップデータに記録し、元来た道を引き返そうとした時だった。
「………これは
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