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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
11話 微かな道標
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、これまでの攻勢を潜ませた。奥の崖下に追い込まれる形で窮戦を強いられていたプレイヤー達は、俺の発言も相俟って何事かと訝しんでいるようだ。しかし、これこそ俺の想定した《勝ち目》だった。
 エルフ達の突然のアルゴリズムの変化には《ディフェンシブ・オーダー》というスキルが起因している。このスキル、対象となったモンスターの防御力を上昇させるばかりか、攻撃に対する受け流し(パリイ)の発動確率や回避動作の使用率まで上昇させるのだが、その反面、攻撃に対して消極的になるというとんでもない弱点を抱えている。発動条件は通常時であればほぼランダムだが、オフィサーの知覚し得る範囲で同小隊のエルフが突然数を減らした場合には、ほぼ確定で使用することとなる。つまりは、直面した脅威に対しての危機管理の再現である。
 ここまでは順調、しかし、モンスターの攻撃が中断したというだけであって、モンスターの排除には未だ至っていない。背を向けて遁走すれば、たちどころに《ディフェンシブ・オーダー》の対を為すダメージ量・敏捷(AGI)上昇支援技能《ブリッツ・カーネイジ》を発動され、逃げる間もなく集中砲火を浴びる事となる。むしろ、防御力が急激に落ちる前述のバフスキルの側面を利用するならば、敗走の姿勢を演じて能動的に発動させ、畳みかけるという破天荒な手段も考えられるが、生憎それはHP全損が許されていた時代の話だ。迂闊に死地を作り出す血迷った行動だけは避けておきたい。されど、このまま膠着状態が続けば、やがては現在のバフも解除されて乱戦が再び繰り広げられる。その前に、次の一手を打つ。


「……今度はあいつらも少し耐えられるようになってるから、一撃じゃなくて何度か攻撃する気構えで来てくれ。出来るか?」
「うん、任せて!」


 力強く頷く相棒に一度だけ頷き返し、《レイジハウル》を鞘に納め、半ば背中合わせの円陣を形成するエルフに向けて地面を蹴る。
 迎撃の姿勢で構えるエルフと、低い姿勢で疾駆する俺の距離は急激に縮まり、渾身の踏み込みを以て残りの距離を一足に詰める。引き絞った拳をエルフの側面目掛けて叩き込もうとした次の瞬間――――

――――突如、後方から飛来した矢が俺の顔を掠め、エルフの眉間に吸い込まれるように穿たれる。有り余る反動を以て後方に弾き飛ばすや否や、更に二本の矢が追撃。エルフだった青い破片が爆散した。あまりにも唐突に、何の前触れもなく。


「なッ!?」
「え、何?燐ちゃん、今のって何があったの!?」


 咄嗟に背後を見遣ると、何かが僅かに茂みを揺らして通過し、更に別のエルフがポリゴン片へと変えられる。あまりの早業に脳が状況を処理出来なかったが、しかし、茂み向こうに何かが潜んでいるという確信があった。数多の情報が脳内を駆け抜け、それら全てが不可視の射手を尋常な
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