閑話―斗詩―
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顔良が数えて十になった頃、母親に仕官を命じられた。
「斗詩、貴方は今度から袁紹様の下で仕えるのよ」
「つ、ついにですか?」
袁家の次期当主、神童、名族の器、彼の噂は耳にたこが出来るほど聞いてきた。
その袁紹に仕える事になるのは、代々袁家に仕えて来た家としてと宿命でもある。
その為彼女は、物心ついた時から勉学、鍛練、礼儀作法など、どこに仕えても恥ずかしくないように教育されてきた。
「私で大丈夫でしようか……」
厳しい教育をこなしてきたにも関わらず。いや、厳しい教育が施されて来たからこそなのか、当時の顔良は内気で自分に自信が持てない少女だった。
「私が保障するわ、それに猪々子ちゃんも一緒よ」
「えぇっ!? ぶ、文ちゃんが!」
母親の口から出た大切な親友の名に、彼女の事を思い馳せる。顔良とは違い、わりと自由な環境で育ってきた文醜には、礼儀作法の『れ』の文字すら感じられない。
これから仕えるであろう袁紹の前で無礼な言動が確定しているようなものである。
「だからこそ、貴方があの子の手綱を握らなきゃね!」
「うー、頑張ります……」
そんな大事な親友を放っておくわけにもいかず。不安を押し込むように両手を握る顔良。
文醜の存在が、彼女の不安を打ち消していた。
………
……
…
「なぁなぁ斗詩ぃー、ここにその袁紹がいるのかー?」
「袁紹『様』だよ文ちゃん、今日の挨拶で失礼の無いようにって、お母さん達に言われたでしょ?」
「わーってるって、ところで袁紹様はアタイ達と遊んでくれっかなー?」
「もうっ、文ちゃん!!」
あれから数日後、例の親友である文醜と共に袁家屋敷の門前まで来ていた。
「良い? 文ちゃん、袁紹様は寛大な方って聞いていると思うけど、最低限守らなきゃいけない礼儀があるんだからね!」
「大丈夫だってぇ、その辺は母ちゃんと予習してきたからさ。手と足は同時に出しちゃいけないんだよな!」
「うー、お腹が……」
「拾い食いでもしたのか?」
自分の不安を他所に機嫌よくしている親友に、少し恨めしげな視線を送りながら屋敷内へ入っていった。
………
……
…
「良く来てくれた。わしが袁逢じゃ、そして――おおっ、丁度来たようじゃ」
袁逢様の言葉に反応して、目線の先に目を向けると、美丈夫が此方に向かって歩いている。
(うわぁ、綺麗な人……)
美しく長い金髪、鷹のような鋭い瞳、色素の薄い唇は僅かに笑みを浮かべていて、私は思わず見とれてしまう。
事前に彼が男性だと知ってはいたものの、女性と聞かされても納得できる美貌だったが――
「お早うございます父上、……この娘達は?」
彼の声音が男性だと再認識
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