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貴方の背中に、I LOVE YOU(前編)
貴方の背中に、I LOVE YOU  (前編)
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ゃんは、座席に乗って待っていた。利家の遺骨を、合祀の墓に納骨しようとした時、住職が出て来て「ここは人間の墓だから、動物の納骨は困る!」と言われた。義衛門は「人間も動物も同じ命だ!」と言い張り、住職の主張を突っぱねた。義衛門の剣幕に、住職はタジタジで退散した。黒君と白ちゃんは、墓石に向かって遠吠えした。それは、子犬・利家との永久(とこしえ)の別れを、惜しんでいる様だった。静の目には涙が光った。帰りしなに先日の食堂に、立ち寄った。静が「小父ちゃん、この前は有難う」と言った。店員は静に「こんにちは」と言い、軽く手を上げ会釈した。義衛門は、食堂の売店で、額に入った画用紙大の写真を購入した。それは、夏夜に、蛍が群がって舞っている、合祀の墓の写真だった。義衛門は写真を、自宅の応接間に飾った。それは、田村家の神棚の様だった。
小学生も後半に成った頃、義衛門は、遊び心で、静の登校時に黒君と白ちゃんが、背中に括り付けて居た弁当の布を、唐草模様に変え、頭には豆絞りの手拭を巻いた。始め、犬達は、豆絞りの手拭を、嫌がっていたが、すぐに順応した。黒君と白ちゃんは、この町に支社が在る、全国紙の記者の目に留まった。大東和戦争前の、暗く、重苦しい時代であった。コソ泥スタイルの、弁当届犬の明るい記事は、瞬く間に全国に広がった。他社からも、取材の要請が殺到した。アイデアマンの義衛門は、黒君と白ちゃんを刺繍した子供用シャツを、自社の縫製工場で作らせ販売した。当時、キャラクター入りの商品は殆ど無い時代で、コソ泥スタイルのシャツは、飛ぶように売れた。全国から注文が殺到して、生産が追い着かないほどだった。義衛門は黒君と白ちゃんの関連グッツも始め、会社の業績は鰻上りだった。
静が中学生の頃、白ちゃんが、翌年には黒君が、老衰で天国の利家の元に旅立った。二匹とも安らかな最後だった。当然、二匹は合祀の墓に埋葬された。義衛門は社長室に、コソ泥スタイルの黒君と白ちゃんの写真を飾り、会社への貢献に、感謝の意を示した。黒君が亡くなった年に、まつが一匹の黄色の子犬を出産した。まつは、黒君・白ちゃんから静の送迎の大役も受け継ぎ、且つ子犬の子育てで、大忙しだった。今度は、静が子犬に黄子(きなこ)と、名付けた。
ある日、安造が、中学校の廊下を歩いていた。廊下の奥で、同校の悪餓鬼の五人が、静に詰め寄り、なじっていた。それを見た安造は「お前ら、何やっているのだ!」と、五人に怒鳴った。五人は安造に襲い掛かり、安造を袋叩きにした。尽かさず、安造も対抗したが五人対一人では、勝ち目が無かった。安造は、顔と腕に傷を負った。静は「安ちゃん、有難う」「傷、痛い?」と言い、安造の顔と腕を、自分のハンカチで押さえた。ハンカチに、血が滲んだ。安造は「大丈夫」と答えた。教師が跳んで来て、傷の手当の為に安造は、保健室に連れて行かれ、静も同行した。
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