貴方の背中に、I LOVE YOU (前編)
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っていた。黒君と白ちゃんが鐘の音を聞いて唸っていた。義衛門が説くかの様に「人は108の悪い行い事が有るのだよ・・・今年の悪い行い、飛んで行け!と言って108回、鐘を打っているのだよ」と、言った。静は少し考えて「お爺ちゃんは悪い事したの?」「お婆ちゃんは?」「タキさんは?」と聞いた。義衛門は「お爺ちゃんは道路で、オシッコしちゃった」。朝子は「お料理作る時、お塩とお砂糖を間違がっちゃった」と言ったら、静が「まだ有るよ。お爺ちゃんのお弁当を、私のお弁当と間違えたでしょう」言った。静が「タキさんは」言い、タキが「夕方、洗濯物、取るのを忘れたの」答えた。朝子が「静は?」と問うと、二三分考え、静は「えーと・えーと・・入学式の時、お爺ちゃんのズボンに穴を開けたの」と答えた。それを聞いて、三人は噴き出した。
新年を迎えた。無信仰の田村家は、初詣には行かず、自宅の正門で、日の出に向かって合掌するのが、毎年の、習わしであった。元旦より田村家には、年始の挨拶に来る客が、絶えなかった。来客の中には静に、多額のお年玉を静に渡す者も有ったが、義衛門・朝子・タキのお年玉は、来客のお年玉に比べ少額の小銭であった。義衛門・朝子・タキ以外のお年玉は、全て義衛門が預かり静の名義で郵便局に貯金した。それは、義衛門の節約主義に基づく考えであった。武井家族が子供達を連れて、年始の挨拶に現れた。兄妹の衣服は、正月なので何時もより若干、小奇麗であった。義衛門・朝子・タキは兄妹にお年玉を渡したが、静と同じに少額の小銭であった。でも、三人は始めてのお年玉に、喜んでいた。六郎も静に渡すお年玉の小銭だけは、工面して来た。六郎は「四日から出勤しますので、宜しくお願いします」言って、武井家族は帰って行った。六郎が勤め始めてから、武井兄妹の白い握飯とタクワンの弁当が、毎日二人分に変わったが、校庭で三人が、寄り添って食べている光景は変わらなかった。
春の彼岸の事だった。例年の如く、合祀の墓に田村家四人でお参りした。帰り道で義衛門は、道路際の食堂に停車した。食事を摂っていると、静だけが食堂の小さな売店で、何かを見ていた。静は、小ちゃな財布から、お年玉で貰った小銭を取り出し、店員に「小父ちゃん、あれ四つ頂戴」と言った。小銭をカウンターの上に置き、ガラスケース中を指差した。それは1p程の、蛍の形をしたペンダントだった。静には、去年の夏休の夜、義衛門と二人で、合祀の墓に来た時の、蛍に感動した思い出が有った。店員が「お嬢ちゃん、お金足りないよ」と言った。静は、うな垂れた。店員は「分かった、大勉強!」と言って、ペンダントを四つガラスケースから取り出し、静に渡した。静はスキップしながら、三人のテーブルに戻った。それを見ていた義衛門が、売店に行き「お金払います。幾らですか?」と、店員に聞いた。店員は「田村義衛門さんですね?紺色のベン
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