貴方の背中に、I LOVE YOU (前編)
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族の弁当は、例の如く、白い握飯とタクワンであったが、量は少し増えていた。朝子とタキは、武井家族の事を思い、多目の料理を作って持参していた。朝子とタキは、自分達の料理を、武井家族に分け与えた。武井夫婦は最初、遠慮していたが「お言葉に甘えて頂きます」と言って、全員で食べ始めた。桃子が「美味しい・美味しい」の、連続だった。朝子とタキは、その光景を眺めて満足感に慕っていた。昼食の時間が終わり、父兄による百メートル競走の時間になった。田村家からは義衛門が、武井家族からは六郎が挑んだ。スタートの空砲が鳴り響いた。結果は一位が六郎、かなり引き離されて、義衛門は最下位だった。義衛門と六郎とでは、親子程の年齢差が有り、体力の差は歴然だった。まして六郎は、道路工事の日雇人夫で、真っ黒に日焼けし屈強な体をしていた。競走を終え、義衛門と六郎が各々の家族の陣に戻ってきた。武井兄妹は有頂天、反面、静は沈んでいた。それを期に、義衛門は会社の庭でストップウォチ片手に猛特訓、見事、翌年の運動会の百メートル競走では一位に輝いた。「お爺ちゃん、凄い、凄い」静の喜び方は、最高潮だった。十二月二十五日、小学校は冬休みだった。午前中から武井兄妹が遊びに来た。静は昨夜、プレゼントを持ってきて澄子に「澄ちゃんは、サンタさんから何もらったの?」聞いた。澄子は「サンタさんなんか来ないよ!」と言い残し、兄妹と共に逃げる様に帰って行った。その夜、静は義衛門に「如何して澄ちゃんの所には、サンタさんが来ないの?」聞いた。間をおいて義衛門は「サンタさんは、沢山の子供の所へ行くから忙しいのだ、澄ちゃんの所にも、必ず来るから大丈夫」と言った。翌日、義衛門は武井家族の家に、出向いた。家は今にも壊れそうなボロ屋だった。夫婦に話を聞いて見た。父親の六郎は、道路工事の日雇人夫で、毎日は仕事が無く、母親の七子は家で内職をしているが、手間賃は微々たる物だと話だった。自分達は二人共、末っ子で学校にも行けず、文字を読む事も、計算も出来ない事も話した。暫くして、義衛門が口を開いた。六郎に向かって「私の会社で働いたら?」と言った。六郎が「学問が無いけど、大丈夫ですか?」と言った。「大丈夫、工場の中の仕事だから簡単だ」義衛門が言った。六郎は「有難うございます・有難うございます」幾度も言い、床に頭を擦り付けていた。
「新年の四日から、会社が始まるので出社して下さい」と言い、ボロ屋の表に出て行った。表から義衛門の呼ぶ声が聞こえた。六郎が表に出て行くと、義衛門は車のトランクを開け、三つの紙包みの玩具を渡した。「今夜、気付かれない様に、子供達の枕元に置いて下さい」言い残し、車に乗って去って行った。六郎は車の後ろ姿に、頭を下げ合掌していた。翌日、武井兄妹が各々、玩具を手にして訪れた。「昨夜、サンタさん来たよ!」大はしゃぎの一日であった。
除夜の鐘が鳴
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