貴方の背中に、I LOVE YOU (前編)
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ープに乗って居た日本女性を、何処かで見覚えが有る気がした。静は記憶を辿っていた。思い出した。彼女はサトである。慌てて、静は店の外に掛け出た。そこには、既にジープの影すら無かった。その夜、静は悔まれる罪悪感で、一睡も出来なかった。傍で、平と黄子が一緒に寝ていた。以後も、若い軍人の運転で、時々、中年の将校は金を貰いに来たが、サトは乗って居なかった。先々日がサトを見た、最後の日であった。
半年程、過ぎた。静の土蔵に一通の手紙が届いていた。フィリピンからの国際郵便であった。封書の裏面にホセ・ゴンザレス(Jose Gonzalez)と差出人が明記されていた。静が開封してみると、中に、写真が三枚と、数枚の英文で書かれた手紙が入って居た。写真を手にして見ると、一枚は義衛門、朝子、タキ、サトが中央部で、両脇に正義と静が写っている田村家の写真と、もう一枚は、八メートル程の大きさの、石造り灯台の様な建造物を、現地の人が、取り囲んで居る写真と、もう一枚は、その建造物の拡大写真で、英字でOur Benefactor Mr. Masayoshi Tamura (私達の恩人・田村正義殿)と刻んで有る、計三枚の写真だった。空爆で焼失して、静の手元には家族の写真は、一枚も残って居なまった。静は家族の写真に暫くの間、見入っていた。平らに写真を見せて、各々の人物の事を語ったが、幼い平は半信半疑だった。久しぶりに見る家族の顔だった。静は英語が読めなかった。戦時中は、英語は敵国の言葉だとして、学校でも殆ど教えなかった。手紙の内容が解らない。静は迷った。静の頭に一つの策が、閃めいた。時々、店に来る、将校の運転手の若い米兵さんだったら、読んで貰えるかも?よく、私に笑顔で会釈し、優しそうだから。それに、サトの事も教えて貰えるかも?と静は考えた。将校がロバート(Robert)と呼んでいた事、も覚えていた。一日過ぎた日、良枝が静に商品の配達を言い付けた。チャンスだと思った。静は、商品を背中に背負い出掛けた。静は、商品を配達し終えた後に、米国の進駐軍に向かった。そこは元、義衛門の工場の、跡地で有ったが、今は進駐軍が物資の倉庫に使われていた。門の衛兵に、ジープの運転手を手真似して、ロバートの面会を申し出た。衛兵は内線で電話を掛けた。暫くして笑顔でロバートが現れた。まず、静はサトの居場所を聞いたが「I Don’t know I Don’t know」(知らない・知らない)と言った。次に静はホセ・ゴンザレスの手紙を取り出し、読んで貰う様に依頼した。ロバートは「OK・ OK 」と、喜作に応じてくれた。彼は、余り上手くない日本語で、手紙を読み始めた。「私は、ルソン島北部の町の人間です。田村中尉の日本の住所は、写真の裏に書いて有ったので、判りました。我々の町の殆どは、日本軍の無差別攻撃によって、破壊され
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