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貴方の背中に、I LOVE YOU(前編)
貴方の背中に、I LOVE YOU  (前編)
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思い出します。家族で食べるのは、始めてでした。若奥様の結婚式、とても素敵だったです。若奥様のスピーチ、感動しました。泣いてしまいました。大奥様から、洋服を買って貰いました。嬉しかったです。その洋服を着て、鏡の前で一人、結婚式での若奥様のダンスの真似を、何度もしました。平君のオムツを替える時、オシッコを掛けられました。平君はニッコリ笑っていました。とても、可愛かったです。私は大丈夫、頑張ります。若奥様も、平君の為に頑張って下さい。私の様な田舎者に、温かくいて頂いた事に感謝しています。どうも有難う御座いました。 サト]と、書かれていた。読み終わった静は、サトの優しさ・哀れさと、自分がサトに、郷里に帰る様に諭した罪悪感が交錯し、涙が止まらなかった。二三日して、土蔵の前に人影を感じた。静は土蔵の前に出た。そこには、黒川武志(たけし)と名乗る、男が立って居た。武志の妻の良枝は、田村家の朝子とは姪の子供で、遠い親戚の関係だった。「仕事を探している様だが、俺の所に来ないか?」と、武志は誘った。「家は店舗と住宅が一緒だから、乳飲み子が居ても大丈夫だ」「身内だから、困って居る時は、お互い様だ」と、言った。以前から、金銭面で細かく、ずる賢い良枝夫婦と田村家とは、反りが合わなかった。武志には、医者に金を掴ませ、兵役を免れていたなどの、悪い噂が、数多く流れていた。しかし、静は明日の食糧(かて)にも事欠く状態だった。静は、武志に世話に成る事にした。翌朝、静は平を背負い、良枝夫婦の営む食料品店に行った。そこには、良枝夫婦と長男で赤子の哲也(てつや)と、使用人が二人居た。「今日から、働いて貰うけど、子供は哲也の横に置いて」と良枝が、つっけんどんに言った。店と、部屋続きで、小部屋が有った。そこに哲也が、子供用布団に包まれて、寝ていた。脇に薄い座布団が、二枚置いて有った。静は、その座布団に、平を寝かし着け、自分が羽織って居た上着を掛けた。「静さんは乳飲み子を抱えているから、哲也にも母乳を上げてね。乳母を兼務で、雇ったのだから」と、良枝は言い、店の奥に入ってしまった。唯さえ出が悪い母乳であったが、二人の赤子に飲ませる結果に成った。幸い、店は食料品店で、常に牛乳の備蓄が有ったので、二人の赤子が腹を空かす事は無かった。かくして、静の乳母兼務の仕事が始まった。食料品店が扱う商品は、男が持っても重く、お嬢様育ちの静には相当、過酷な仕事で有った。良枝夫婦は、厳しく口出しするだけで、仕事を手助けする気配は、全く無かった。毎日、武志より僅かな賃金と、食品を貰う日々で有ったが、それも良枝の目に止まると、減らされる事が、間々有った。良枝は静の美貌に常日頃、妬みを持って居た。武志は良枝の居ない時は、静に、色目を使ったり、体に触れたりしていた。武志の商売は、進駐軍の横流し品を、市価の数十倍で売り付けて、暴利を貪る悪
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