貴方の背中に、I LOVE YOU (前編)
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衛門さんと朝子さんと犬のお骨を、一緒に壺に納める方法しか、出来ませんでした。申し訳ないです」と、深々と頭を下げ、一つの骨壺を静に渡した。壺の側面には田村義衛門・朝子・愛犬まつと、書かれて居て、それは実筆による、役人の気配りだった。静はお礼を言い、壺を土蔵の中に飾った。静は「義衛門は無宗派なので、我が家には線香も鐘も、有りません」と言ったら、母親は「では、合掌だけでも」と言い、息子の役人と共に合掌・礼拝をして香典袋を壺の前に置いた。静は再度、お礼を言いった。静は、義衛門の「人間も動物も同じ命だ!」の言葉を思い出し、一つの骨壺は義衛門の意に叶っていると、考えていた。静は役人の母親に、六郎の近況を尋ねたら、意外な話が入って来た。「武井専務も専務の奥様も、お亡くなりに成りました。専務は、知り合いの借金の保証人に成ったあげく、家は没収されたそうです。それからは、工場の宿直室に、御夫婦と娘さん二人と住んで居ました。人の噂で聞きましたが、息子さんは、この町の何処かに、居る様です。空襲の時、専務は[社長の居ない時は、俺が会社を守る責任がある]と言い、奥様と一緒に、工場の消火に当たって居ました・。結局、B29の爆弾に直撃を受け、二人とも即死だったそうです。空爆の直前に、二人の娘さんは、避難させたそうですが、娘さん達の消息は不明です。[工場が、軍服を作って居たので、米軍機が狙った様だ]と、皆が言って居ました。でも、不思議な事が有るものですね。役所に保管して有った身元不明や引取手が無い遺骨の中で、専務ご夫婦の遺骨だけが、消えて無くなったそうです。役所では、遺骨が、盗難に逢う事は有りえないと考え、保管して有った倉庫には、鍵は無かったそうです」と、話した。次々、入る悲報に静は心を痛めたが、澄子と安造と桃子の安否が、気掛かりだった。
静は、義衛門と朝子と愛犬まつの、骨を合祀の墓に納骨したかったが、金銭的にも合祀の墓に行く旅費を工面する余裕がなく、暫くは土蔵の中に飾る事にした。
八月六日、広島に原爆が落ち、八月九日、長崎にも原爆が落とされた。八月二十日の正午の天皇陛下から、ラジオによる大切な、お言葉が有る。と言う報道が国内中を駆け廻った。国民全員が玉音放送に聴きいった。天皇陛下の肉声を聴くのは、この玉音放送が始めてで有った。それはポツダム宣言を受け入れ、我が国の敗戦を認める内容だった。しかし、大半の国民が、陛下の文語の論旨が難しすぎて、理解が出来ず、報道関係の解説や周りの雰囲気で、日本の敗戦を知った者が多かった。八月三十日、連合国最高司令官マッカーサー元帥が、この町の飛行場に飛来した。国民全体が、これからの自分達の生活に、極度の不安を感じていた。静の土蔵にはラジオも無く、電気も通って居なかった。静とサトは街の号外で敗戦を知った。静は生活の不安も感じて居たが、この殺戮の時代が終わった事
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