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貴方の背中に、I LOVE YOU(前編)
貴方の背中に、I LOVE YOU  (前編)
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」静の目は、大粒の涙で一杯だった。同時に義衛門・朝子・タキの目にも涙が一杯だった。会場の参列者からも、全員のすすり泣きの合唱が聞こえた。花束の贈呈の時間になった。静は前もって正義に「私が三人に花束を渡したい」と言い、正義の承諾も得ていた。まず、静は正義の兄達の所に行き「不束者ですが、宜しくお願い致します」と、言って花束を二人に渡した。正義の両親は、正義が中学生の時、相次いで他界した。兄二人が、正義の学費を工面し、士官学校に入れた事を、正義から聞いていた。次に静は花束を持って、三人の前に行った。タキが立ち上がった。「タキさん、有難う」言って花束を渡した。朝子が立ち上がった。「お婆ちゃん、有難う」言って花束を渡した。松葉杖の義衛門は、立ち上がる事が出来なかった。静は義衛門の背後に回った。背後から義衛門に抱き着いき「お爺ちゃん、大好き。お爺ちゃん、有難う」言って、花束を義衛門の胸に抱かせた。会場から、すすり泣きと、満場の拍手が鳴り響いた。宴も、たけなわに成り、司会者からスピーチは入った。「この辺で、新郎の正体を、暴露しようと思います」一瞬、会場が静まった。「女学校時代の下校時に、静さんはカメラで撮られた事が有りますね。ここに一枚の写真が有ります」と言って、司会者は写真を手にした。それは、静の女学校時代の写真であった。「この写真を撮ったのは、新郎の正義さんですね」正義が照れくさそうに、頭を掻いた。彼が、自分の宝物にしたいと言って、静の写真を撮った学生だった。静が驚いて、正義の顔を見た。義衛門と朝子も驚いて、互いの顔を見合合った。「これは、動かぬ証拠ですから、静さんに、お渡しして置きます」と言って、写真を静に渡した。会場が爆笑した。「それでは、新郎新婦の、仲睦まじい愛が、永遠にと託して、お二人でダンスをして頂きたいと思います」と、言われた。二人は、恥ずかしかったが、司会者の言われる間々にワルツを踊った。丸でシンデレラと王子の様だった。皆が、拍手の渦で祝福した。しかし、このワルツが、二人の、最初で最後のラスト・ダンスになる事など、二人は知る由も無かった。帰りしな、市長が義衛門の所へきて「義衛門さん、今日は、一杯泣かせて貰った。有難うございます」と言って、会場を後にした。会場が感動する、結婚式だった。
戦況は、益々厳しく成り、政府は国民に絶えず、事実を隠ぺいし続けた。義衛門の会社は政府の管理下に置かれ、工場も軍服を作る軍需工場に変貌していった。金属類は全て国に接収され、義衛門の車も、その対象に成った。正義は軍の上層部と折衝したが、非国民と罵られ、反って正義は、上層部に睨まれる結果に成った。会社も車も政府に取り上げられた義衛門は、生気を失い、丘に上がった河童の様だった。義衛門は女中タキとサトに、郷里に帰る様に促した。政府も、国民に倹約を求めていたので、女中などは、贅沢の象
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