貴方の背中に、I LOVE YOU (前編)
[13/27]
[1]次 [9]前 最後 最初
事を静に話した。と、電話で義衛門に伝えた。義衛門は静が自分の生い立ちを知った事を悟った。翌朝、静は、まつ・黄子と庭で戯れていたが、口数は極端に少なかった。
静が女学校の卒業式を終えてからの彼岸の日、田村家族は六郎の運転で、例年の通り合祀の墓に行った。帰宅したその夜、義衛門は座敷に静を呼び、実母の白黒写真が、裏面に貼ってある手記を渡した。手記は五六冊に膨れ上り、雪が義衛門に書いた手紙も添え貼りして有った。「女学校を卒業して、これからは静も大人の仲間入りだ。これに実母の事や、静の全てが記して有る。静にあげるから、今晩でも読んで大切に保管して置きなさい」と言った。静は手記を手にして、部屋に戻った。手記には寒い夜、正門で、静が泣いていた事から、白ちゃんの口紅の話しなど、全て書いて有った。その夜、静の部屋には、明かりが灯り続けた。静の目に、涙が溢れていた。静寂に満ちた夜だった。翌朝、静が三人に向かって「お爺ちゃん・お婆ちゃん・タキさん有難う」「お爺ちゃん、私が、この手記を書き続けてもいい?」言った。義衛門は静に「もちろん、いいよ」と、優しく言った。三人の目には光る物が有った。
以前から、武井兄妹は自分達が幼い頃、キャラ弁を運んでくれた、黒君と白ちゃんの墓参りをしたい、願望を持っていた。会社で、六郎が「自分の子供達が、合祀の墓に行きたがっているので、車を使わせて欲しい」と、言って来た。義衛門は、快く承諾した。その頃には、六郎は自らの力で、小さいながらも家も新築していた。
静が女学校を卒業した途端、町で評判な美貌の持ち主の静には、縁談話が殺到した。義衛門は静の縁談の条件として、田村家の跡目、すなわち、田村家に婿入りしてくれる人物が欲しかった。そして、もう一つ気掛かりは、静が自分達とは血縁関係が無く、捨て子だった事だ。だが、婿入りでは縁談は少なかった。卒業してから一年過ぎたある日、陸軍少尉・中村正義と名乗る軍服姿の凛々しい(りりしい)好青年が、不意に現れた。見知らぬ人物の訪問に、田村家は困惑した。玄関先で青年は「是非、静さんと結婚させて下さい」と言った。義衛門は以前から、自分に障害を負わせた軍隊を、好きでは無かった。その日は、青年に玄関先で引き取って貰った。それから毎日、青年の訪問が続いた。一週間過ぎた。義衛門は静に「どう思う?」聞いた。静は「面白い人ね」と小笑して答えた。義衛門は、正義の義が、自分の義衛門と、一文字同じ事に気を良くしていた。自分の後継者の名前としては、的確な様に思えた。義衛門は青年に会う事にした。青年を座敷に上げた。田村夫婦と青年は、座卓を挟み向き逢った。結婚の条件として婿入りが可能か?と、静の生い立ちを話した。「婿入りは、自分が三人兄弟の三男坊だから、大丈夫」と言い、田村夫婦の、静さんを育て上げた偉業に、感銘を受けています。「静さんの生
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ