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貴方の背中に、I LOVE YOU(前編)
貴方の背中に、I LOVE YOU  (前編)
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「安ちゃん、痛い?」と心配そうに、静は言った。「少し」と安造は、答えた。静は「お前は、お爺と、お婆しかいない。捨て子だろう」と、五人に罵られた(ののしられた)事を、教師と安造に話した。一方、五人の悪餓鬼は職員室で、教師から強く説教された。静は幼い頃の可愛さは薄れ、次第に美しさが増してきた。それは、実母・雪の美貌に似て来るかの様だった。中学生頃になると、安造は、静に、淡い恋心を抱く様になっていた。だが、静にとって安造は、昔からの幼馴染の親友であるだけであった。
静の中学卒業する間近に、田村家に大事故が起きた。義衛門が、帰宅時に、赤信号で信号待ちを停止したら、軍の大型トラックに追突された。反動で義衛門の車は、対面の電柱に激突、義衛門は右足に、複雑骨折の大怪我を負った。追突したにもかかわらず、トラックを運転していた兵隊は、非を認めず、自らの正当性を主張した。当時は軍に逆らう事は、許されない時代であった。重症の義衛門は、松葉杖なしでは歩行が出来なくなり、唯一の趣味である、車の運転も出来ない体になった。義衛門は、静の中学校の卒業式や女学校の入学式に、出席するのを断念した。義衛門の車は、堅固なドイツ(ベンツ)だったので、事故に由る車の大破は免れた。以後、車は田村家の車庫に放置、義衛門の会社への往復は、人力車に頼っていた。一週間後のある日、会社の社長室に六郎が、入社以来、始めて現れた。義衛門が社長の席に座っていた。義衛門の後ろ壁に掛かっている額が、六郎の目に入った。縦書きで[上を見てください。貴方より頑張っている人は、一杯います。下を見てください。貴方より貧乏な人は、一杯います。両方見る事が出来れば、貴方は人間です]と書かれ、額に収まっていた。それは義衛門の根本理念だった。六郎はその言葉に、強い感銘を受け、心にも刻み込まれた。六郎は、自分が義衛門の運転手に、なりたい事を、懇願した。「学問は無いが、一生懸命勉強して運転免許を取り、社長の足である運転手になりたい」と言った。後日、六郎は運転免許書を取得、晴れて、義衛門の運転手が実現した。
静は女学校に進学、澄子と安造は、各々の職場で勤め始めた。静の美貌は益々冴え、町で評判になっていった。武井兄妹は、働き始めると、田村家への訪問頻度は減っていった。静が、女学校に入って三か月ほど経ったある日、義衛門が、静と同じ位の歳の女の子を連れて帰って来た。義衛門は「今日から、家で働いて貰うサトさんだ。歳は、静の一つ年上の、十七歳」と朝子とタキと静に、サトを紹介した。「宜しくお願いします」サトが言った。それは、武井兄妹が、各々の就職で、田村家より遠のき、寂しくなった静への、義衛門の気配りだった。静とサトは同じ年頃なので、すぐに二人は、意気投合した。田村家の家族が五人になった。黒君・白ちゃんから大役を引き継いだ、まつに依る送迎は、静の登下校
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