恋慕深化
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ズはぱたぱたさせていた手を止めて、唖然と見た。
「…………………………なんだ?」
「いや、なんでもないよ。というか、早く済ませよっ」
デイドラの訝しげな声音にはっとしてリズは取り繕うようにとっさに笑みを浮かべる――が、
「ああ、そうだな」
と言って、作業に戻ったデイドラをリズは作業に戻らず、見詰めていた――つい一瞬前のデイドラの表情を思い出しながら。
(さっき…………笑っていたのかな?)
薄暗くてはっきりは見えなかったが、心なしか口元が緩んだように見えた。雰囲気も緊張の糸が張ったような刺々しいものではなく、どこか柔らかいものだった。
だが、その笑みは一瞬のことだったことに加えて、前述の通り薄暗かったために、気の所為であるという可能性も拭えない。
(うーん…………わかんないし、どっちでもいっか。こうして一緒にいれるだけで…………って、またこんなこと考えてるし…………)
無表情のデイドラの顔をしばし眺めながら考えあぐねていたが、ふと自分が惚気のようなことを考えていることに気付く。
ここまでくると、ごまかしきれないし、慌てる気力もなくなった。
(これが…………『好き』ていうことなのかな?)
頬が次第に赤みを帯びるのを感じながらリズはデイドラに目を遣った。
その先で、デイドラは淡々と作業をしていた――僅かに熱を帯びた視線を向けられていることに全く気づかずに。
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