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ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
恋慕深化
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ていた。
 命を賭した連戦の末にデイドラの握力は知らぬまにないと等しくなっていたのだ。
 デイドラは手から短刀を弾かれたことに呆気に取られ、一瞬頭上から迫る爪の対処が遅れた。
 その一瞬の遅れは、命の駆け引きの中では命取りだった。

 (よけられない!防ぐしかない!)

 刹那に判断を下したデイドラは短刀を弾かれた手とは逆の手に爪の迎撃命令を発した。
 その命令に応じて、腕が持ち上がる――が、

 (……間に…………合わない……)

 と、判断したとき、既に爪は眼前、腕は今だ持ち上がっている途中。
 到底間に合いそうになかった。

 (…………俺は死ぬのか?…………)

 突然に流れが淀んだように引き延ばされた時間の中でデイドラは自問する。

 (こんなところで死ぬのか?――死ぬわけにはいかない)
 (こんな奴に殺されるのか?――殺されるわけにはいかない)
 (復讐を遂げずに死ぬのか?――俺は死ねない!復讐のためにっ!!)


 「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 リズの絶叫とともに、目に触れるか触れないかの瞬間で、ときが止まったように爪が停止した。


 「おああああああああああああああああああああっ!!」


 それと入れ代わるようにして、流れ出した時間の中、デイドラは体中の空気を搾り出すように裂帛(れっぱく)の声で咆哮し、掻き集めた余力を全て腕に込めた。
 防御のために持ち上げていた手を返し、瞬きする間も与えず、一条の光の尾を残して、袈裟斬りに振り下ろした。
 そして、そのままの流れで、水平に薙ぎ払い、その間に背中から抜き取った短刀で腹部を刺突。さらに薙ぎ払らった短刀でも刺突し、それと同時にもう一方の短刀を(ねじ)り抜き、再び刺突するという要領で交互に突き刺した。
 ただ刺した。
 鞘を失った刀のように、収まることを知らない(いき)り立った心に支配されたデイドラは腕を動かしつづけた。

 「デイドラっ!もう止めて!」

 と、リズが悲鳴とともにデイドラを背後から抱きしめなければ、動けなくなるまで続けていただろうと思えるほどにデイドラは鬼気迫る気配を発していた。
 腕を回されている胸や身体を密着されている背中にリズが身につけている軽装越しに人肌の温もりを感じながら、デイドラは心の猛りが醒めていくのを、鼓動が普段のそれに戻っていくのを感じた。
 少しして平常心を取り戻し、デイドラは目の前のウォーシャドウに視線を向けた。
 胴は穴だらけで、中には貫通して向こうが見えているものもあり、左肩から右脇腹に引かれた直線から上の部分は綺麗になくなっている。
 初撃の袈裟斬りによるものだ。
 身体の一部を欠損しているものはそれだけでなく、辺りの累々たる死骸は頭部や四肢
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