恋慕深化
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。
言わずもがなのことだが、それはウォーシャドウだった。
ウォーシャドウが計ったように十字路への道を塞ぐように現れたのだ。
だが、それだけでは収まらなかった。
十字路の奥や角から無尽に漆黒の顔が浮かび上がった。
裂け目からも淀みなくウォーシャドウが吐き出されている。
葬列のように並ぶ凹凸の乏しい輪郭だけの顔。
その光景はまるで怨敵を見付けた怨霊がその怨敵に群がるような言葉にならない悍ましさがあった。
いや実際、仲間を殺されたウォーシャドウがデイドラに、彼がしたように、復讐を遂げようとしているのかもしれない。
もしくは、浅慮にも行き止まりに留まった冒険者をダンジョンが喰らおうとしているのかもしれない。
ダンジョンは生き物だ。
体内にのこのこ入ってきた冒険者を油断をした者から牙を剥くのだ。
「いっ――いやあああああああああっ!!」
その夥しい数のウォーシャドウにリズが空気を裂くような悲鳴を上げた。
「うるさいっ!落ち着け!たかがウォーシャドウだろう!」
そのリズの肩を両手で揺さぶってデイドラは叫んだ。
「こんな数のウォーシャドウなんで、倒せないよ!無理だよっ!」
「お前は戦わなくていい!」
「――そ、それこそ無理だよっ!」
恐慌状態だったリズは思わずデイドラの言葉に理解が追いつかず、しばらくの思考停止から叫び返した。
その間にもウォーシャドウは鈍重な動きで距離を詰めている。
「俺がすべて片付ける」
無駄な言い合いはこれで終わりと言うかのように、リズの肩から手を離すと、ウォーシャドウの葬列に向き直った。
「ひ、一人でこんな数っ」
リズはそのデイドラを止めようと手を伸ばす。
が、それを避けるように、デイドラは一歩前に踏み出した。
「獲物があっちから来てくれたんだ。これほど楽なことはない」
そして、笑みを浮かべる。
言うに及ばないことではあるが、敢えて言わせてもらうと、それは恐怖にすくむ己をごまかすための笑みじゃない。
狂気に満ちた凄惨な笑みである。
そんなデイドラから、リズは、夥しい数のウォーシャドウを上回る恐怖から、反射的に手を引いた、いや引いてしまった。
「それが懸命だ。生き残りたいなら俺を止めるな」
と、その気配を感じ取ったのか、それだけ言い残すと、
「ふっ!」
ウォーシャドウの群れに突貫した。
「デイドラっ!!」
手を引いてしまったリズはその背中に名を叫ぶことしかできなかった。
◇
「ラァッ!!」
デイドラはウォーシャドウの胸部を一閃する。
が、苦もなく身を後
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