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ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
恋慕深化
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り落ち、地面に当たると花瓶のように粉々砕け散った。

 「もぉ〜、何でそんなに私を置いて行くのぉ〜。それにもう終わってるし」

 息を上がらせて通路に姿を現したリズはウォーシャドウだった残骸を見てうなだれた。

 「私全然役に立ってないよね」
 「そんなことはない。それなりに役に立っている」
 「えっ、本当に!」

 うなだれていたリズはぱぁーっという効果音が聞こえて来そうなほどに弾けんばかりの満面の笑みを湛えた。

 「置いてきた武器もこうして回収してくれるし、魔石も荷物も受け持ってくれているからとても身軽に感じる」
 「………………それ、私がサポーターだってだけじゃん」

 だが、自分の手から短刀を受け取るデイドラの悪気も嘘偽りもない言葉にリズはすぐにしゅんとなってうなだれた。

 「さぽーたー?何だそれは?」

 デイドラは初めて聞いた言葉に眉をひそめて訊く。

 「えっ、知らないの?」

 俯いていたリズがぽかんとした顔をする。

 「ああ、知らない。『さぽーたー』なるものなど、寡聞にして知らない」
 「ほぇ〜、珍しいね」

 と、本当に珍しいものを見るような目でデイドラを見て

 「サポーターというのは、名前の通り、冒険者を後方支援する人達のことで、道具とかドロップアイテム、回復薬の管理だけじゃなくて魔石を回収管理するの」
 「…………確かに、今のお前そのものだな」
 「うっ…………まぁ、それはそれとして、サポーターなんて冒険者だったら知ってるはずだよ?」

 リズは決まり悪く、視線を泳がせると、話題を切り替えた。

 「俺は潜り始めてまだ間もないからな」
 「そうなんだ。だけど、それでも知ってると思うんだけど。ちなみに、潜り始めてどれくらいなの?」

 リズは何気なく訊いた。

 「そうだな、確か……とう――」

 デイドラもたいしたことでもないように平気で『十日』と言いかけたところで――


 ぴきり、ぴきり。


 という何かが裂けて剥がれ落ちる音に最後の文字を遮られる。

 デイドラとリズが同時に十字路の方、つまり行き止まりとは逆の方に視線を走らせた。
 二人は聞き覚えのある、いや、聞き慣れた音に反射的に反応したのだ――ダンジョンがモンスターを産む音に。
 壁から発せられる音は次第にその音量を大きくさせていき、ついに壁が破れたとき最大となった。
 縦に裂けた裂け目からは見覚えのある黒い爪がぬっと姿を現す。
 それは、一つだけではなかった。
 通路を挟んで対面する壁にできた裂け目からももう一つ黒い手が生えていた。
 それらの黒い手はうごめき、壁面を削ぎ落としてゆく。
 そして、通るのに十分の大きさに広げて、それは壁から這い出した
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