恋慕深化
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五階層を難無く突破し、六階層に下りる階段でデイドラは腰を下ろすと、腰に付けているポーチから紙に包まれた干し肉を出して食べはじめた。
「で、何でまだいるんだ」
そして、デイドラの斜め後ろに座ったリズは無意識のうちに彼の干し肉を凝視していた。
その明け透けな視線に気付かないわけがなかった。
「だって危ないじゃん。それとも、冒険者に向いていない女の子を一人で帰らせるつもりなの?」
リズは視線を逸らすと自分が冒険者に向いていないことを悪びれず、答える。
「…………勝手にしろ」
そのリズの返答にばつが悪そうに答えると、言葉を続けた。
「食べないのか」
「え〜っとぉ、コボルトに囲まれたときに小物入れごと落としたみたい。あっ、で、でも、大丈夫っ!伊達に冒険者してるわけじゃないんだよっ!一食ぐらい抜いても、へ、へっちゃらだよっ!!」
何がどう大丈夫なのかいまいちわからないが、リズは手の平を突き出して、左右に振る。
「そうか」
とだけ言うと、デイドラは昼食を再開した。
それを確認すると、リズは(彼女なりに)視線の気配を絶ちながらデイドラの口に運ばれる干し肉を凝視した。
「――――――やる」
リズの物欲しそうな視線を背中に感じ、デイドラは嘆息すると、口を付けたところを裂いて取り、残りの部分を振り向くことなく、背後のリズに突き出した。
「い、いいよっ。大丈夫だってばっ」
「いいから、食べろ」
「………………本当にいいの?」
恐る恐る顔色を伺いながらリズは訊いた。
「いいって言ってるだろう」
「本当に?これほとんど全部だよ?」
と、言いながらも空腹に抗えず、そっと干し肉を手に取るリズ。
「後から腹減ったと騒がれるよりましだ」
「さ、騒がないもんっ!」
「わかったから、食べろ。元々全部食べるつもりはなかったんだ」
声を荒げて抗議するリズに煩わしそうに言ってデイドラは短刀を抜いて状態を確認しはじめた。
「じゃあ、食べるね」
と、わざわざ宣言してからリズは小さな口で干し肉に、はむっとかぶりついた。
それを確認すると、デイドラは残った干し肉を口に放り込んで、短刀の状態を確かめた。
(少し荒く使い過ぎたか)
コボルトの群れを排除したときに短刀の刃毀れを顧みなかったつけが刃に現れていた。
所々に細かな刃毀れが見受けられた。
(たいしたことはないか)
が、刃毀れも細かで許容範囲に収まっているようで、デイドラはそれほど重く受け止めなかった。
「ぼうふはふけはいの?」
干し肉で小さな頬を膨らませながらその様子を眺めていたリズ
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