第3章 しばしの休息 ハイネセン第33中央軍病院
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はらわたを裂かれ、焼き殺され、宇宙の塵や土の栄養になってしまった兵士たちはこんな腐った発表を聞いたらどう思うだろうか?死んでも死にきれないであろう。
ケイン中将やレスラー少将、ロイ予備役中佐(戦死後2階級特進)そしてまだたったの16歳であったウィリアム兵長(戦死後2階級特進)は・・・
と思うと涙があふれてきた。
そこから1週間はほぼうつ状態になっていた。
・・・・・・
入院から1か月後ちょっとした外出なら構わないということを医者から言われて(勲章授与式の時は何も言われなかったのに)私はあるところへ向かった。
「ハイネセン同盟軍戦没将兵墓地」である。
ここには叔父のケーニッヒ准将やケイン中将の墓がある。
ここに来るときは軍人は必ず第1種礼装で来ることが義務付けられており、私は白い第1種礼装に軍曹の階級章をつけ、今までに授与されてきた10個の勲章を胸につけ、下士官用の短剣を吊り下げてそこへ向かった。
胸部が少し痛むが、何とかなりそうであった。
まず向かったのはロイ予備役中佐の墓。
ただの白い石板の上に
「ロイ予備役中佐
ヘンシェル攻防戦にて戦死
殊勲十字勲章受章
宇宙歴789年 7月18日」
そこには多くの花束が添えられており、彼の人望の厚さがうかがえる。
私は、花束を置き、敬礼をしてその場を去った。
その次は第1小隊の戦死者のところへ向かった。
すると、第2分隊の戦死者の墓のところに20個以上の勲章をつけた一人の准尉が立っていた。
それは、「おやじ」であった。
おやじはあのゼッフル粒子爆発に巻き込まれて、大やけどを負ったが運よく生き残って救出された。
第2分隊は連隊砲兵隊の防御を担っていたために爆発に巻き込まれて分隊員10名のうち実に7名を失った。
おやじは今回の戦闘で責任をとって退役するといったが、軍上層部はその申し出を黙殺。逆に2階級も昇進させた上にいきなり5つもの勲章を授与した。
その時のおやじの背中は小さくしぼんでおり、あのユーモアセンスにあふれ、豪快なおやじの原型は1ミリもとどめていなかった。
私は第1小隊の戦死者とおやじに敬礼し、その場を去った。
ケイン中将の墓は将官墓地地区にあった。
私は、そこへ向かった。
そこには先客が1名いた。
レナ少尉である。
レナ少尉は私を見るなり、一言も言葉を交わさずに敬礼してその場を立ち去った。
彼女はケイン中将の愛弟子ともいえる陸戦士官であったから、なおさらのことであろう。
ケイン中将の墓に向かって
「中将。
あなたのおかげで、生きて帰ることができました。
感謝いたします。」
と言っているうちに、涙がぼろぼろこぼれてきた。
拭ってもぬぐっても涙は止まらなかった。
もうそこにいることは耐えられなかった。
私は敬礼をし、墓地から立ち去った。
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