幕間 〜二人の道化師〜
[10/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
と彼で、店長は其処には入っていない。
きゅきゅっと盃を一つ拭いて、店長はコトリと机に置いた。
「私はもう寝ます。いつも通り鍵は放り込んでおいてください」
「早いな、どうした?」
「そろそろみゅうがうなされる時間です。暇を見つけては貧民区域に連れて行って勉強させてましたからね、飢えの恐ろしさを直視して堪えているんでしょう」
「そうかい……順調そうで何よりだ」
「まだ全然足りませんよ。裏切らないようになるにはしばらくかかります。最終試験は……張勲と出会ってからですし」
「なら問題ない。好きにしていい」
「ええ、ではごゆるりと」
去り際の表情は笑っていながらも、瞳に宿る憎しみの感情は抑え切れていない。それでいて厳しい父親のようにもなりつつあるのだから救われない。
呪い呪われの関係で繋がるみゅうちゃんとの関係でも、人を幸せにしたい店長は辛く当たる事は出来ない。
なんて……
「残酷な呪いだ……とか考えてるだろ」
横からの測るような声に振り向くと、彼はグビリとお酒を喉に流していた。
「普段は厳しいのにふとした時に優しさを見せられるとそれに縋っちまうもんは多い。店長は遣り切れなくて本心からやってるんだが……みゅうにとっては甘いお菓子と一緒。
依存しちまったらもう無理だ。強制的に学ばされているみゅうはその甘いお菓子を求めずに居られない。甘やかされて育ったからこそ辛い時に受けた、二律背反の感情を抑えて与えられる優しさが頭から離れなくなる。店長も優しいからみゅうを捨てられなくてどうしようも無い。確かに残酷なやり方だ。中身を知ってるもんからしたらな」
ふぅ、とため息を一つ。
机に並べていた書簡を整えながら、秋くんは横目で私を見やった。
「外から見ちまうと止めたくなるだろ? 依存なんて言葉を使うとたちまち悪いように聞こえるんだからよ」
「……そうだね。もっとお互いに分かり合えるって……言っちゃいそう」
其処にある想いを無駄にして。
当事者の悩みに第三者が介入することは良い時があっても悪い時もある。
今回は後者。敢えて秋くんは悪いように言って、私を試してる。
「言わないけどね」
「へぇ……そりゃまたなんで?」
少しあげた口の端。大人びた笑い方が普段よりも映えていた。
ぎたぁのこぉどを一つ鳴らす。
音のカタチは“びぃまいなぁせぶん”。なんとなく、この音がいい気がした。哀しみの中に熱さがあるような、そんな音に聴こえた。
「他の人が何か言っても二人の中にナニカが残ると思うから。時間と一緒に溶かして行かないとダメな時もあるんじゃないかな?
それが例え利用されてるって分かってても、みゅうちゃんにだけ甘く接するわけにはいかないもん」
そう。私達が描く理想のカ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ