幕間 〜二人の道化師〜
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人達の笑顔を想えば心が温かくなる。観客の全てが愛する人で、皆に幸せになって欲しいと思う。
店長と私は同じ。料理と舞台の違いはあれど、方法が違うだけで想いは同じ。
華琳様も同じ。命のやり取りというだけで、想いのカタチは全く同質。
――そして……秋くんも。
自分の為だけど自分の為じゃない。そんな変な人達が此処には集まっている。
華琳様にしても、店長にしても、秋くんにしても、私にしても。
ちぃちゃんや人和ちゃんはちょっと違う。彼女達はまだ私程は狂っていない。其処にあるのは罪悪感が大きくて、本当に人間らしいと思う。
ぼーっと彼の横顔を見ていた。
彼女達のように罪悪感に包まれたのならいっそ楽なのに。彼はそうならずに狂っていく。人の命を救うことが嬉しいから、罪悪感を幸せと同化させる術を身に着ける。
話に聞いた黒麒麟と同じように、このままだと秋くんもそうなって行くだろう。
「ん……よし、終わった」
「こちらも終わりました」
「お疲れさん」
「ふふ、お互いに」
ふう、と一息ついた二人は互いに杯を鳴らした。
はっと潜っていた思考から抜け出した私は、二人の笑顔に少しばかり見惚れる。
男の子の友情って……なんか羨ましいな。
「天和もお疲れ。遅くまで起きててよかったのか?」
「え? あ、うん。大丈夫。たまには夜更かししてもいいかなって」
「美容にはよろしくないですが……」
「睡眠不足はアイドルの敵だぜ?」
「あいどる?」
私に話を向けられて、秋くんから不思議な単語が出た。
あー、と言い淀んだ彼から判断するに、また異国の言葉なんだろう。
「舞台で歌って踊る人のこと。天和も地和も人和もアイドルってわけさ」
「へー……あいどる、かぁ……」
何処かいい響きだった。可愛らしい表現が少し気に入った。
「ただその言葉の本来の意味は……“偶像”なんだが……すまんが取り消すよ」
一寸だけ思考が止まる。偶像……と言われて。
ぽりぽりと頬を掻いた彼はバツが悪そうにため息を吐いて私の目を真っ直ぐに見やって……緩く笑う。
「地和や人和はまだしも……似合わないんだよ。お前さんは偶像ってより道化師だから」
それは些細な違い。彼にとっても、私にとっても。
どちらも作っている自分でありながら、其処に本心があるかないか。
この胸にある想いは嘘じゃない。私は私の為だけに笑ってるんじゃない。作った笑顔はもうなくなった。戦ってきたあの時から、私は偶像じゃなくなった。
こんな考え方に気付くのは同じ道化師だからだ。
其処に本心が無いと、彼は笑いもしないだろう。
「あなたも同じでしょうに……まったく」
くすり、と店長が笑った。似たモノ同士なのは私
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