幕間 〜二人の道化師〜
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麟が怖ろしいと皆が言っていた。
たった一人で三万を撃退した呂布は絶望でしかなかったが、その次に恐れていたのは……劉備軍の中でも黒麒麟の部隊。
黒麒麟の剣閃は紅い華を咲かせる。己が命を賭けて行われる舞は死線上の演舞にして、命を喰らい合う原初の舞台に移り変わらせる狂気の宴が始まる。
たかだか義勇軍のはずなのに、押し寄せる熱量は精強な曹操軍に勝るとも劣らなかった。否……あの熱量は曹操軍さえ凌ぐ。死に臆することなく寡兵であれど突撃してくるあの部隊には、誰しも恐怖を持たずにはいられない。
私達が狂気に沈めた黄巾の人達と全く同じ在り方のモノで、それさえ超えていた異端な兵士達を歌も歌わずに創り上げていたのだから。
どれだけ冷たい人なんだろう……そう思っていた。
店長に出会ってからは普通の男の人ですよと笑われて、連合が終わった時には英雄の一人だと謳われていて、私の中に疑問が浮かんだ。
敵として、私は敵の大将として黒麒麟の噂を聞いて来た。華琳様の所に来てからも警戒する敵としての話を聞いて来た。
だから怖いとずっと思ってた。
連合でもそう。徐州での戦の話を耳に挟んでもそう、幽州を見捨てたことを理解してもそう……私は黒麒麟が怖くて仕方なかった。
――民の為にと戦う黒麒麟が振るう弾劾の刃は、必ず私達に向くはずだと思っていたから。
真実を知れば、きっと黒麒麟は私達を殺すはず。そんな確信があった。
罪は確かにあるのだ。私達は巻き込まれたなんて甘いことはもう言えない立場にある。
逃げることだって出来たはずで、それでも戦うことを選んだのは彼らに想いがあったからだ。
天の塗り替えなんて本当は思ってなかったけれど、どうしようもなくなった大陸を変えれる力が私達と彼らにあったから……私達は戦った。
私の命が消えることが怖かったんじゃない。
私が死ぬことで、其処にあった想いを台無しにされてしまうのが……怖かった。
どうして歌を歌った?
始まりは自分達の為だった。好きだったから歌って、三人で楽しく旅をしていた。
でもいつしか私達が歌に乗せた想いは、人の心を救いたくて仕方なくなった。
理不尽は嫌だと、歌に乗せた。
私達は生きていると、歌に乗せた。
この想いを知ってくれと、歌に乗せた。
一人ひとりが弱くても、きっと皆で幸せになれるから……元気づけようと歌い続けて膨らんだ想いは、刃を取らせた。
悪徳の太守に耐えきれない人達が抗った。私達の歌に勇気を貰って。解放された人達は涙を零して笑顔を浮かべた……手を血で汚そうとも、自由が欲しかったのだ。
一つ始まれば二つ三つと、四つ五つと繋がればもう止まらない。
人が死ぬ。幾人も死ぬ。死体の山が積み上がって行った。私達は救いたかったは
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