幕間 〜二人の道化師〜
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前列に居た子供達の頭を撫でて、彼はそっとギターを置いた。
やんややんやと騒ぐ横では、三姉妹がそれぞれに表情を変えている。
「ホントなんなの秋斗って……」
「店長になんでも出来る人だって聞いてたけど……」
「うんうん♪ ばっちりだったよ秋くん♪」
驚愕に頭を押さえている二人とは対照的に、天和だけは弾けるような笑顔を浮かべて居た。
「ってなわけで……天和にやる」
「……本当にいいのかな?」
「ああ。お前さんが一番似合う。良かったら子供達と遊ぶ時にでも使ってやってくれ。この街ではそれが許されるんだからさ」
渋る天和であったが、彼がすっと肩に掛けてやると……一つ弦を弾いて音を出した。
治安もよく、どんな歌であろうとこの街では許される。ギターが一本あるだけで、この街ではどこでも彼女のライブ会場に早変わりだ。
駅前で歌を歌っていた若者達のように、錆びれたシャッターの前で自分の存在を示していた歌姫たちのように、彼女にも自由に歌を届けて欲しい……そう、彼は思っていた。
歌とは本来、何者にも捉われずに歌うモノだから。
「ふふ、ありがと秋くん♪」
演奏中も彼の指をじっと見ていた天和は、カタチを真似してコードを一つ。
一番簡単なコードの音が綺麗になった。明るく、楽しげに。
おー……っと子供達が称賛の吐息を漏らし、天和は気恥ずかしそうに可愛らしく笑う。
「姉さんだけとかずるいんだけど?」
「クク、地和の身長じゃギターに弾かれてるみたいになるからよ」
「なんですってぇ!?」
「まあまあ、ちぃ姉さん。秋斗さん、ありがとうございます」
小さな喧嘩になりそうだった所を人和がゆるりと諌めた。ちょいちょいと、彼女は地和の肩を叩いて示す。
視線の先、愛おしそうにギターを抱き締める天和の頬は緩みっぱなし。しょうがないわね……とため息を零すしかない。
「じゃあ店長に口聞いといてよ? “みるくれぇぷ”でいいわ」
「私は“ふるぅつさんど”で」
「はいよ、ありがと二人共」
触らせてーと寄ってくる子供達と戯れる天和を見つめながら、三人は緩く笑みを零す。
この平穏な時間は、誰であっても大切な宝物。陽だまりの中で皆には笑顔があった。
†
私と秋くんの出会いは突然だった。
世に謳われる英雄の一人。悪を断じる黒き麒麟。冷酷にして非情。人の命をゴミのように扱い、己が命すら投げ捨てるように戦う将……それが黄巾の時に噂で聞いていたモノ。
その跳躍に逃げ場無し……燕の如き少女は遭遇するだけで恐ろしいと誰もが言っていた。
美麗な舞いは頸を対価に……軍神と呼ばれる麗人と出会えば諦観に賦するしかないと皆が恐れていた。
しかし誰よりも、その軍では黒麒
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