幕間 〜二人の道化師〜
[3/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
残惜しくもなろう。
ぽりぽりと頬を掻いている彼に、地和と人和は呆れたため息を漏らし、天和はクスクスと慎ましく笑う。
「ちょっとくらいいいんじゃないの? だって夜にも店長の店で仕事するんでしょ?」
「あのなぁ、夜に仕事があるから昼の仕事を終わらすんだよ」
「忙しいんですか?」
「程々に。作業中の現場の進行具合確認と商業区画の長への書類提出、警備隊の各詰所での経過報告をまとめつつ街の治安状況も書かなきゃならん。移動の時間がもったいねぇが……自転車の完成にはあとひと月くらい掛かるからなぁ」
ため息を一つ。
歩きでは何かと不便である。馬を使えばいいことなのだが、街の中で忙しなく馬で動き回るのは余りよろしくないと彼は思っていた。
請け負った仕事の数が数だけに、此れからはどうにかしなければなと考えてもいる。実はもう、真桜に移動時間短縮の絡繰りは手配済みである。
ネジやチェーン一つ彼が提案すれば真桜は改良を施せて、完成品の見た目が頭に入っている彼がその概要を説明すれば、彼女の豊かな想像力からすれば完成までこぎつけられる。
「あ、そういえば……お前さんに渡したいモノがあるんだった」
忘れてた、とばかりに彼はポンと手を叩く。
官渡で過ごした数か月の間に作り上げたモノは多い。小さなモノから大きなモノまで、休憩を使って真桜自慢の工作兵達と共に遊びを追及していたのだ。
ゆったりと木陰の隅に向けて歩く彼に首を傾げる天和。木に立てかけてあったモノを見つめて、より一層不思議そうに首を捻った。
カチリ……開かれた特製の鞄から取り出されたモノは、一つの楽器であった。
「吟遊詩人かなんかかと思ってたからさ、歌いながら弾けるモノをって思って。弾き方は……まあ、後で教えるよ」
渡すのは時間が空いている時に作れるかどうかを煮詰めていたモノの一つ。この街に帰ってから真桜と工作兵達が作ってくれた、生きていた時代では有り触れていて、この時代では有り得ない楽器。
似たようなモノがこの時代には有ったから弦の数とカタチ整え、音階を判断しつつどうにか出来上がった。琵琶よりも大きなそれは……何処からどうみてもギターである。
「ギターって言ってな。六つの弦で音を出す楽器なんだ。試作品だから音の質までは保障しかねる」
目を真ん丸にして誰も言葉を発せずにいる所に、彼はすとんと腰を下ろして座り込む。
抱えたギターに硬貨を添えて、ゆっくり、ゆっくりと音を奏でる。一つ一つを耳で確認して頭の部分の金具を弄った。絶対的な音感を持っているわけでは無くとも、曖昧ではあるがチューニングは整えられた。
「あんまり上手くはないけど、俺の知ってる曲でいいんなら歌ってもみるが……聴くか?」
「聴きたい!」
「徐晃様のお歌聴かせてー!」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ