幕間 〜二人の道化師〜
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あなたと同じ道化師だから、その笑顔の裏にある涙を知っている。意地っ張りなあなたに対して出来るのは、話を聞いて読み取るくらい。
華琳様達や月ちゃんや詠ちゃんや雛里ちゃんの前ではこんな姿は見せられないはずで、店長のいるこの店くらいでしかきっと見せることも無い。
黒麒麟の場合は……自分で諦観した友達の側でしかこんな素は見せなかったって店長も言ってた。
あの大地を離れた時から、黒麒麟に安息は無かったんだ。
――かっこわるくていいよ。それでも笑顔でいられるあなたは、黒麒麟みたいに壊れないんだから。
笑って、笑って、笑って。道化師になったあなたは耐えられる。
踊らされるくらいなら自分から踊ったらいい。けれどあなたの演目は、この店でだけはしなくていい。
ゆっくりとぎたぁのこぉどをまた変える。
組み合わせは何がいいかな? “でぃ”、“えー”、“じぃ”、“しー”。四つのこぉどを順番に。組み合わせを変えたりしてじっくりと。
中々合わせやすい。いい歌が歌えそうだった。
でも止める。またこぉどを探し始める。一番あの歌に合うこぉどを。
目を瞑った秋くんは音が心地いいようで、楽しげに頬を綻ばせていた。
トクトクと注いだお酒をまた飲んで、この空間に酔いたいというように。
乱世じゃなくて、こういう場所を作る方があなたは向いていると思う。
しかし想いを繋ぐから戦わずには居られなくて、あなたは乱世を駆け抜ける。
――もう、黒麒麟もあなたも怖くないよ。私と同じ想いだって分かったから。
自分の為に戦っても、あなたは兵士達を狂気に落とすことは出来なくて、
自分の為に歌っても、私の歌は力を宿すことが無い。
誰かを想う剣だから、あなたの元には“皆”が集まって、
誰かを想う歌だから、皆が生きる渇望を手に入れてくれる。
届ける想いは誰かの為に。私もあなたも道化師だから。それが力の源で、私達の幸せでもあるんだよ。
だからね……
――戦乱の舞台はあなたに任せる。その代わり私は、あなたがしたくても出来ない平穏な舞台で踊って歌おう。
彼がしたい事は私もしたい事。
命を使うか、使わないかの違いだけ。
生きていく全ての人を幸せにしたい私と、生きていく全ての人を救いたい秋くん。
戦う舞台が違って、目指す世界はただ同じ。
もう二度と、理不尽が強いられることの無い世界に。
私は喉が張り裂けるまで歌を歌い続けよう。
あなたは、その命が燃え尽きるまで人を救い続けて。
――でも……今だけは、ゆっくりしていってね。せめて……私っていう道化師が代わりに歌う今だけは。
あなたに歌を歌おう。
私と同じ想いを宿しているあなたに。
あなたは兵士と同じだか
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