幕間 〜二人の道化師〜
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日中の木陰は何故こうも心地いいのか。
のんびりと過ごすのも悪くない。そう思いながら秋斗は街の広場でいつもの通り休憩を取っていた。
この街で、というか彼が過ごしてきた嘗ての街でもそうであったが、のんびりというのは彼の場合は人とは少し異なる。
「さて、次は誰かね?」
「じゃああたしー!」
「ぼくだよ!」
「えー? 私がいいなぁ」
「俺だってば!」
群がる子供達を相手に遊びながら過ごす、それが彼の過ごし方である。
幾つかの鉢を使って行うその遊びは子供達には大盛況であった。
ぐ……と拳に握った道具に力を入れる。指と指の間に挟んだ紐は外さぬように力強く、それでいて全身から無駄な力を抜いた理想の状態。
「クク……じゃあ次は四人で順番をずらして一気に来い。俺の独楽は最後まで負けんぜ?」
「うっそだぁ!」
「さすがに負けると思うけど」
「本当さ。さあさ、やってみようか」
「じゃあいっくよー!」
独楽である。それも木を削って作っただけの簡易なモノ。
準備は万端。勝つ気は満々であるが、子供に華を持たせてやるのもいい。本気でやり過ぎると飽きてしまうモノだ。強さを示しつつ程よい所で落としどころを、と。
「れでぃ……すりぃ! つぅ! わんっ! ごぉ――――しゅぅとっ!」
愛らしい掛け声を合図として、彼は絶妙な力強さで独楽を回す。
くるくる、くるくると良く廻る独楽は真桜と作った特別製。他愛ない遊び道具であるが、官渡で兵達の暇つぶしにもなった素晴らしい遊びである。
さすがに現代の某四聖獣が飛び交ったりするアニメの掛け声を教えるのはどうかと思うが、彼としても楽しくて仕方ない様子。
一人目は即座に叩き落とされた。二人目は少し粘ったがやはり弾きだされた。三人目ともなれば長く続いたが……やはりダメ。そして最後の四人目の所で……彼の独楽は遂に回転を失った。
子供達も上手いモノで、教えて練習をすれば直ぐに上達したのだ。戦っていた四人は一番の手練れで、さすがの彼であれど勝てなかった様子。
「おおう……さすがに四人はきついか」
「うー……なんでそんなに強く出来るの?」
「そりゃあ大人と子供の差って奴だ。回し方の筋はいいんだ、次やる時には一対一でも分からねぇぜ?」
「でも教えて貰ったどんな遊びも勝てないよー?」
「クク、大人になりゃ勝てるさ」
「……大人ってずるい!」
「むぅ、私もはやく大人になりたいなぁ」
他愛ない会話が為されていた。他の所の子供達は独楽に熱中している様子でわいわいと騒ぐ声が聴こえる。
良い日だ。表情も自然に綻ぶ。仕事の合間にこうして子供達と遊ぶことは、彼にとって癒しである。
そんな場所に、近づいてくる影が一つ、二つ、三つ。
「あ!」
「てんほーお姉ち
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