五十九話:フェイト・リピーター
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が彼の場合は別格だった。いかなる犠牲を払ってでも審判を越えようとした姿勢は例え手段が間違っていたとしても尊敬が置けるものだった。実際、彼の兄のユリウスはそんな背中に憧れを抱いていた時期もあったのだ。ルドガーはビズリーを複雑な思いを抱きながら見返す。ビズリーはルドガーの視線に一瞬だけ視線を緩めた後、言葉を続けた。
「そして、全てが終わったあかつきには……コーネリアとクラウディア、そして―――ユリウスを生き返らせる」
「っ! ……オリジンにやらせるつもりか?」
ユリウスという名前に反応してルドガーがビズリーに尋ねる。ビズリーは黙って頷くとオリジンが自分達を生き返らせたのなら道具にさえしてしまえば、彼等を生き返らせることも自由に出来るはずだと語る。
「ルドガー、私に協力しろ。精霊を道具にすれば全てが救われるのだ。あの娘、エルが生きる世界は保障され、お前の時歪の因子化も解除できる。そして、私達は当たり前の家族として生きていけるのだ! 全てをやり直せるのだ!」
最後の言葉にはビズリーの切実な想いが込められていた。もし、審判がなければビズリーは厳しくも優しい父親だっただろう。妻が生きていれば良き夫だっただろう。そんな、あり得たかも知れない幸せな人生をクルスニク一族に生まれて来ただけで奪われてしまったのだ。
ルドガーはビズリーの提案に時歪の因子化の進行した顔を押えながら熟考する。ここでビズリーの手を取れば、まず間違いなくビズリーの言う通りになるだろう。自分にとっては良いことづくめだ。もしかしたら、エルとも共に過ごせるようになるかもしれない。ただ、精霊を犠牲にさえすれば全ての願いが叶うのだ。そう、大切な仲間を犠牲にすれば……。
ルドガーは目を瞑り、精霊の主の顔を思い出す。常にお腹を空かせているかと思えば、凛とした空気を漂わせることのある仲間。元がつくが同じく精霊の主であったツンツンとしてはいるが偶に見せる子供っぽい笑顔が好きだった初めて愛した女性。そんな精霊達と繋がり合えるのだと信じて真っ直ぐに夢を追う親友。そして、なにより自分の大切な少女が成長した彼女がどんな選択をするのだろうかと考えれば答えは直ぐに出た。ルドガーは顔を上げ、真っ直ぐにビズリーを見つめて口を開いた。
「悪いが、お前の提案には乗れない。世界を創るのは俺達、死人の仕事じゃない。未来を生きる―――エル達の仕事だ!」
勢いよく啖呵を切った後にそれにと軽くイッセーに笑いかけながら小さく、何かを犠牲にする生き方はやめたもんな、と付け加える。イッセーは一瞬驚いたような顔をするがすぐに唇を吊り上げて頷く。
「ルドガー、お前は精霊に生きている間も死んだ後も弄ばれて何とも思わないのか!?」
聞い
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