五十九話:フェイト・リピーター
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いていた槍を見る。それは彼女の力を吸収したためか黒く染まり、禍々しさを遥かに増していた。
「オーフィス! ビズリー……貴様、あの子に何をした!?」
「その娘の“無限”の力をほんの少し頂いただけだ。それと、“無”の力で無限を断ち切りしばらくの間、力を使えなくさせて貰った。今のこの娘はただの子供と変わらん」
ビズリーは今のままでは勝てないのでルドガーとヴィクトルを越える力を得る機会をうかがっていたのだ。目標達成の為には如何なる手段をも行使する覚悟を持つ彼はこの世界における最強の力を狙っていた。さらに、いずれぶつかる時に相手の戦力を落としておく必要があると考えたのでオーフィスの力を吸収すると同時に封じたのである。
「バカな……オリジンの力にそのような能力が…?」
「この槍には万物の根源たる“無”の力、つまり全てを叶える可能性が込められているのだぞ。私達を玩具のように扱う力だ。この程度は造作もない」
確かな怒りを込めて自らを玩具と言うビズリーの目はかつてよりも苛烈な憎悪の炎が宿っていた。彼にしてみれば、死後にまでわたり精霊に弄ばれているという状況は屈辱以外の何物でもなかった。いっそ、自害してやろうかとも考えたがそれでは結局の所、精霊を楽しませるという点では変わらないのでこうして生きて、是が非でも願いを叶えようとしているのだ。
「それに……私はクルスニクの鍵を二回もしようしたのだぞ。私以上にクルスニクの鍵について詳しい者がいるとすればオリジンぐらいなものだ。お前が知らなくとも当然だ」
「妻も…孫も利用するか……つくづくクルスニク一族らしいな…ビズリー。正史も分史も……さほど変わらない」
「全ては審判を越えるため、ひいては人間の為だ」
ヴィクトルの嫌味にも眉ひとつ動かさずに答え、今度はルドガーの方に顔を向ける。ルドガーはようやく痛みが引いたのか、のたうち回るのをやめて黒歌に体を支えて貰いながらも立ち上がっていた。だが、その体にはほとんど力が残されておらず、額からは大量の脂汗を流し、視力を失った右目は閉じられたままであった。それでも、ルドガーはビズリーを睨みつけ精一杯に声を上げる。
「ビズリー……お前は何を望んでいるんだ!」
「精霊を道具とし、人間だけの世界を今度こそ創り上げる。そして、精霊を手に入れたあかつきには審判の犠牲となった全てのクルスニク一族の数だけ―――殴る!」
語られた願いはある意味でルドガーの想像通りであった。ビズリーは精霊を恨んでいる。彼が精霊と共存していこうという考えを持つことがないことは良く分かっている。そして、彼が死の間際に語った本当の願いも知っていた。一族全ての無念と邪念を背負っているとも言っても過言ではないその背中は大きかった。
父の背中は大きいとは言う
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ