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SAO−銀ノ月−
第七十八話
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の前座か何かのように思っていないかのように笑っているが、少数のプレイヤーは身を屈めながら歩いている。……まるで、踊るように走るリーベに見つからないように。

 一度感じた違和感は拭えずに、もう一度じっくりと観察してみると……やはり気のせいではない。やはり一部のプレイヤーはリーベから隠れるように移動して、逃げるように立ち去っている。彼らは素人目から見ても、装備もしっかりとしたプレイヤーに見えるが……?

「どーしたの? 着いたよ?」

 ――と、真紅の瞳が飛び込んできた。どうやら考え事をしている間に目的地についていたらしく、リーベは不思議な顔をして俺のことを見つめてきていた。

「っ……ああ、なんでもない」

 リーベの目的のガンショップは言う通り真ん前にあり、店頭には売れ筋商品の如く多数の銃が陳列されている。……自分には、どれがどんな銃かの区別も付かないが。

「お金はウチが保つからさ! 安心して買ってね!」

 ……女子に完全に奢って貰うというのは、少しプライドが邪魔するが。ここはお言葉に甘えさせて貰うことにする。リーベは随分と羽振りがいいらしく、適当な銃を持って「これカートン買い余裕!」などとうそぶいている。

「ふむ……」

「ところでところで、ショウキくんさ!」

 分からなくても店頭の銃をしばし眺めながら、試し撃ちとかが可能なのかなどと考えていると、リーベから幾分小さな声で話しかけられた。銃からそちらの方に振り向くと、リーベは静かに笑いかけていた。

「SAOって……知ってる?」

「――――ッ。そりゃ知ってる……が」


 ――唐突なリーベのその問いかけに、俺の思考は一時停止する。何とか平静を装うとするものの、どうしてもその質問に前に声がうわずってしまう。

「ウチはね、そのSAO事件の、そう……《SAO失敗者》ってとこかな」

 ……俺たちのような、SAOをクリアして現実に帰って来た者たちのことを、俗にSAO帰還者などと呼ぶことがある。SAO事件のことが忘れ去られようとしている今、当事者間以外では死語と化している感じがあるが……それとはまた違う、《SAO失敗者》とは。あの世界で失敗したということは、もはやこの世界にはいないはずなのに。

 ――帰還できなかった彼ら、彼女らのように。

「それはどういう――」

「よっし! 鬼ごっこしよ、ショウキくん!」

「……え?」

 ――さっきまでの少し落ち着いた声音はどこへやら、問い詰めようとしたリーベは、突如としてそんなことを叫びだした。

「鬼がショウキくんで、逃げるのがウチ。ただお金あげるのも面白くないし、ウチを捕まえたら何でも買ってあげる!」

「お前……!」

「とう!」

 止める間もなくリーベ
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