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観化堂の隊長
6部分:第六章
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ったんですか」
「責任は自分が取ると」
「はい、そう仰って私達を返して下さったのです」
「そんな方がいたんですか」
 これには玲子も流石にいつもの減らず口はなかった。
「台湾の人達の為に」
「方便だったと思いますよ」
 馬さんはふとこう言った。
「私達を台湾人と言ったのはね」
「ええ、それはわかります」
 このことは僕にもわかった。多分玲子にも。
「当時台湾は」
「紛れもなく日本でした」
 そうなのだ。これは事実だった。台湾は日本領であり台湾の人達も日本人として法律的に完全に平等に扱われていた。李登輝元総統も日本の大学に通い陸軍将校になっている。
「ですから。日本人の筈なのに」
「馬さんを逃がす為にですね」
「おそらくそういうことだったと思います」
 だからこそだったのだ。日本人ならば責任を問われる。しかし台湾人としたならば。その広枝警部の心遣いだったのだと僕も思った。
「それで。私達を台湾人として」
「逃がしたと」
「それでですね」
 今度は玲子が馬さんに尋ねた。
「どうなったんですか?」
「どうなったとは」
「広枝警部です」
 やはり問うのはこのことだった。
「警部は。どうされたんですか?」
「アメリカ軍が上陸していましてね」
 話はまずそこに戻った。
「つまり交渉する相手がいまして」
「そのアメリカ軍ですね」
「はい。台湾人だから日本人ではないからとアメリカ軍に言って」
「馬さん達の安全を保障してもらったんですね」
「そういうことです」
 話はそういうことであった。そうして馬さん達を助けたのだ。
「二千人いましたが皆それで助かりました」
「皆・・・・・・」
「二千人もですか」
 僕達はあらためて驚かされた。流石に二千人も救われたとは思わなかった。本当に広枝警部という人の素晴らしさを知った思いだった。

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