暁 〜小説投稿サイト〜
観化堂の隊長
5部分:第五章
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「それがこの道観の名前ですか」
「はい、そうです」
 見れば馬さんの笑顔がさらにいいものになっている。それがまた僕達には不思議で仕方がなかった。けれど馬さんはそれをよそに僕達に話を進めるのだった。
「ここはね。私の恩人が祭られているんですよ」
「恩人っていいますと?」
「台湾はかつて日本でしたよね」
 今度言うのはこのことだった。もう僕達にとっては常識と言ってもいいことだった。
「戦争までは」
「ええ、そうですけれど」
「それが一体」
「だからなんですよ」
 そしてまたこう言うのだった。
「私も日本人でした」
「ええ、それは」
「それは知っていますけれど」
「それが一体」
 僕達にはどうしてもわからず首を傾げるばかりだった。話が全然見えない。
「戦争の時はですね」
 今度は戦争の話になった。
「フィリピンにいまして」
「フィリピンにですか」
「確か激戦地の一つでしたよね」
 僕達はこう馬さんに話した。このことも僕達は知っていた。一応は、であるが。

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