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入れ替わった男の、ダンジョン挑戦記
誕生、前代未聞の冒険者
第七話
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としても、親父殿が許さない。

「いつ出発するんだ?」
「荷物を持ったらすぐにでも。」

帰って来る時にまとめた荷物は、此方の『僕』の部屋にそのまま置いてある。それを取ってくれば、いつでも人工島に行くことができる。

「メディアで騒がれない日が無いようになる位、頑張るよ。『ヨーン』、楠英司として。」
「えー君…、」
「兄さんも、身体を労ってね。教師になるんでしょ?」

母と、兄に巣立ちの言葉を告げる。今にも母は泣きそうだが、我慢していただきたい。

「正直、英司に独立を先にされるとは思わなかったよ。…いつでも連絡して、相談してくれ。家族なんだから。」

引き留められない悔しさを残しながらも、兄は僕の意思を尊重してくれた。深く家族に頭を下げ、部屋に向かい、荷物を回収し、玄関に立つ。

家族が見送ってくれる。一つ息を吸い込み、万感の思いを込めて告げる。

「行ってきます。」

此方の僕にも告げた言葉を、家族も伝える。やはり、優しい声で、

「「「行ってらっしゃい。」」」

の返事が。笑みを浮かべ、ドアを開ける。放り出されて行った最初とは違う、公認の出発。

丁度、隣から蒼真と澪の二人が出てきた。が、何も感じない。残滓が泣くだけ泣いて吹っ切れたのか、余裕綽々だ。

「どこ行くのエージ、こんな時間に?」
「人工島まで拠点を買いに。冒険者なもので。」

不思議そうな澪にコレからのプランを簡潔に教える。ムム、だが拠点を買っても食事等はどうするか。自慢じゃないが、僕の生活能力は底辺に近い。…ここは使用人を雇うか。ロマンスグレーかつダンディーな紳士的執事を。想像してみる。

『英司様、御食事の用意が出来ております。』
『ありがとう。』
『浴場の準備もしてありますので、どうぞ、ごゆるりとお過ごし下さい。』

…とてもいい。実にいい!やはり使用人は初老の男性に限る。メイド?喫茶店に行けば良いんじゃないかな?とか考えていると、幼馴染みが肩を揺さぶりながら、

「…ジ!…ージ!エージ!」

と連呼。何だようるさいな。僕の今後を左右する思考を邪魔しないでいただきたい。

「なんで冒険者な訳?エージが冒険者なんて聞いてない!」

言ってません。知らないだけです。君達は甘酸っぱい青春を存分に謳歌してほしい。学生なんだから。

「そして彼氏君。一つ良い物をお見せしよう。」

ふと思い付いた風を装い、蒼真ににこやかな表情を見せる。怪訝そうな蒼真。まあ、意趣返しなんだけど、

「冒険者ってさ、素の身体も強いんだ。だからね、こんなパンチだって造作もないんだ。」

言いながら、顔面の傍に身の毛もよだつような右ストレート。青ざめた彼を見て殴られた代金も返せたし、大満足である。

ギャーギャ
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