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第一章
観化堂の隊長
何度来たかわからない。台湾は本当にいいと思う。
「まず食べ物が美味い」
僕はもう馴染みになっている広東料理の店に入って言った。
「この海鮮麺にしてもね」
「あんたねえ」
向かいにいるのは彼女の岩本玲子だ。子供の頃は太っていたらしいけれど今は程よく痩せて白い肌と細い目が印象的な娘だ。まあ美人といってもいい。黒いショートカットには個人的にこだわりがあるみたいでいつもこの髪型だ。
「そうは言っても食べ過ぎじゃないの?」
「そうか?」
「そうかも何もよ」
玲子は呆れたようにして僕に言ってきた。
「麺類だけじゃなくてね」
「ああ」
「点心だって大分食べてるじゃない」
「美味いからね」
こう答えるだけだった。けれど確かに僕の周りにはやたら皿が集まっている。とりあえず豚料理と海鮮ものにはこだわっているつもりだった。
「台湾のお店はね」
「まあ美味しいことは美味しいわね」
玲子もそれは認めてきた。
「けれど。それでもこれだけ食べるなんて」
「駄目なのかい?」
「駄目っていうかね」
憮然としてまた言ってきた。
「炒飯食べたわよね」
「海鮮炒飯ね」
「それに点心は」
「海老蒸し餃子にフカヒレ餃子に海老焼売に豚バラ煮込みにね」
「他には」
「あとこれかな」
見れば他にも頼んでいて食べていた。
「ああ、これこれ」
「ビータンね」
「あと野菜はこれだよね」
八宝菜も頼んでいた。食事のバランスに気をつけるとか言って注文して食べていた。
「それと海月の酢の物もね」
「結構食べてるなあ」
「結構どころじゃないわよ」
また憮然とした顔で僕に言ってくるのだった。
「それだけ食べて。しかもデザートも頼んでるじゃない」
「健康的にフルーツにしてるよ」
「ライチに桃に葡萄ね」
「これだけ食べれば栄養は万全じゃない」
「栄養の問題じゃないわよ」
口を尖らせてまた僕に言ってきた。
「それだけ食べたら太るわよ」
「そんなのは承知のうえだよ」
平気な顔で玲子に返した。
「そんなことはね」
「だから幾ら食べても平気なのね」
「食べれば食べるだけ入るお腹なんだ」
「便利なお腹ね」
目がやけにクールだった。素直に褒めているわけじゃないのはそれでわかる。
「中に何かいるんじゃないの?」
「実はさ」
「ええ」
「お腹の中に蛇を飼ってるんだよ」
思いきり嘘を言ってみた。ここで海鮮麺も食べ終わった。
「それでこれだけ食べないと駄目なんだよ」
「ふうん。じゃあちゃんちゃんこや下駄を飛ばしたり髪の毛を飛ばしたりするのね」
「髪の毛は勿体無いね」
実は抜け毛は少しだけ気になってる。遺伝では家族にそうした人間はいないが
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