2部分:第二章
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第二章
「破れたところを縫えばそれでよいのだ」
「あの、ですが」
「破れても縫えばまた着ることができる」
帝は仰る。さらにだ。
「それだけではないか。軍服を取り替えるまでもない」
「左様ですか」
「その程度のことで服を取り替えてはきりがない」
服が何枚あっても足りない、こういう意味であった。
「服を何枚も無意味に使うものではないのだ。だからこれでいいのだ」
「左様ですか。それでは」
「後で縫わせる。そしてまた着ることにする」
こう仰りだ。実際にだ。
その軍服の裏は縫われ帝は再びその軍服を着られた。そうして何もなく済んだのである。勿論新しい軍服は出されなかった。
これが明治帝の軍服での逸話である。贅沢を好まれず質素倹約を旨とされていた。そうした資質を持っておられる方が明治という我が国の重要な時代の元首であられたことは我が国にとって幸運であろう。昭和の昭和帝と並び我が国の近代における英邁な帝であられる。そのことはこうした何でもないような逸話にも出ていると言うべきであろうか。この高貴な質素さはだ。今も我が国の皇室に連綿と受け継がれている。まことに貴いものと言うしかない。
軍服の裏 完
2011・4・22
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