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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第百十四幕 「残影乱舞」
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その場を離脱した。

 だが、敵はそれを許すほど甘い相手ではない。上方からエネルギー警告。高熱源の敵性攻撃とISが認識したそれを読むよりも早く、ユウは光の鞭のようなものに打ち据えられても解いた場所へ弾かれた。

「ぐあぁッ!?くそっ、やっぱり相手はこっちの動きが見えてるか!」

 特殊部隊が視界を塞ぐ行動をとる時は、暗視ゴーグルの類で必ず自分の視界を確保して優位に立とうとする。ISでもこのイニシアチブの在り方はあまり変わらない。敵は前か――後ろか――全く見えない。
 とにかくこの場に留まっていてはいい的だ。速やかに地面を蹴ってその場を離脱する。

が、その直後に反対方向から悲鳴が聞こえた。

「うぐッ!?く、あああああッ!?」
「光の鞭に打たれなさい?そらそらそらっ!」
「なっ、簪を狙ってきたぁ!?くそっ!お前の相手はこっちだ!!」
「だめ、ユウ……!これは、罠だから……!」

 速やかなターゲット変更によるこちらの行動の抑制と、敵の片方を煙幕内に縛り付けることで僚機の動きを誘導する友釣り戦法。ここで一塊になってしまえばそれこそいい的にしかならない。それを分かっていて、それでもユウは結局簪の方へと向かってしまった。それが戦略的に誤った行動だと自覚しながら。

 暗闇を高速移動しながらヒット&アウェイを繰り返す雷陰の不気味な眼光が煙幕内にちらつく。
 それはまるで、幻影や幽霊が実体を伴って現実に復讐しているような、一方的な恐怖と殺意。

 闇の中から光の鞭が飛来し、簪の声が聞こえた方へ向かうユウと風花百華を横から襲う。高熱を伴った高速の衝撃が次々に打ち込まれ、振動が容赦なく揺さぶる。

「ぐあぁぁぁぁぁぁッ!?く、そっ……視界が悪いだけじゃなく、鞭の軌道が複雑すぎて読めない……!!でぇいッ!!」

 辛うじてバリアを展開した拳で鞭を弾き飛ばす。バチィッ!!と音を立ててスパークが起きた。鞭の引っ込んだ先に鳴動を発射するが、命中した気配はなく閃光は空しく宙を切った。鞭を使っている間はそれほど移動していない筈だと踏んでいたが、相手の方が移動が速い。

 当然と言えば当然だ。向こうはこの戦法を用いるにあたっての問題点や弱点を全て把握している筈。だからこそ迅速に行動し、確実にダメージを与える方法を取っているのだ。非人間的、作業的に。だからこそ、そのシンプルで確実な戦法が恐ろしい。なまじ接近したところで体術に劣るこちらに勝ち目は薄いだろう。
 そう、今、ユウたちにはほぼ勝機がない。2対1でも勝つ目が殆ど無かったにもかかわらず、相手は「確実な手段」を取ってきた。すなわち絶対的優位な状況から限りなくリスクの薄い戦法で攻める手段にだ。地の利、練度、戦法。少数で多数に勝つために必要となる要素を相手は的確に押さえている。


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